[12]鏡越しのパートナー

男と女は惹かれあう。理屈でなく惹かれあう。
どうしてかね?
そもそも、電極のプラスとマイナスはどうして引きあうのかね。そこに、なにか特殊な要因でも働いているかね。
我々は旅人である。ながい、ながい道をゆく旅人である。
単純にして、もっとも複雑なこの二つは――男女は、我々の存在そのものである。
プラスとマイナスは惹かれあう。どうしようもなく惹かれあう。そして、この二つが結びつくとき、一方だけではもちえない、おおきなエネルギーを発生させる。二つが一つになるとき、1+1では語りえない底知れぬエネルギーがそこにある。
大空を舞う。まるで孤高の鷹が、くったくなく大空を駆けめぐるようだ。
男と女は、対極に位置する存在である。男が女に惹かれ、女が男に惹かれる。それは、それぞれが反対の質をもっているからに他ならない。自分に無いもの、自分とはまったく逆のものに人はどうしようもなく惹かれていく。
安定感だけであれば、おなじ質のもの同士でいればいい。でも、それだけでは面白くない。あきたらない。
なぜ?
あなたも私も、自分にないものを探している。逆のものを獲得したい。反対のものに惹かれるのはこのためだ。
同質のものと付き合うより、よほど困難でリスクがともなうが、それでも得るものがおおい。
我々は、自分の反対の極をもとめ、惹かれあう。が、実際は、あなたのなかにはすでに反対のものが備わっている。まぎれもない、男と女がそこにいる。あなたが男なら、女が眠っている。女なら、男が潜んでいる。
電極のプラスは、すでにそのなかにプラス・マイナスをたずさえており、マイナスのなかにもトータルな一つがそこにある。
我々は異性をもとめて旅をするが、本当はなにを探しもとめる旅なのかね。かわいい女かね? それとも逞しい男かね?
それはすでに、あなたのなかにある。我々は、我々のなかにある異性を探しもとめていたに過ぎない。
あなたが男なら、あなたのなかには女が眠っている。その眠っている女が、あなたに自分を探しあててくれるよう、懸命に叫んでいる。そして、彼女のこの叫び声こそが、異性に惹かれる真の理由だ。
我々は、異性に惹かれあう。
あなたが女なら、男に惹かれる。訳もなくそうなる。そして、あなたが無性に好きになった男をじっくりみてみるといい。
あなたと反対でなかったかね? なにより、それこそがあなたのなかに眠っている男ではなかったかね?
椎名蘭太郎