[14]Who are you?

人は、洗脳の生き物だ。洗脳なしに、人がみずからの意志によって生きることなどほとんどありえない。なにが不可能かって、自分の意志をもつことほど不可能なものはない。自分の意志とは本当に難しいものなんだから。
自分の意志と呼んでいるもの。それはいったい何の真似かね? 
なにかの洗脳に過ぎないものではなかったかね? そもそも、どうしてそうでないと言い切れるね? 単に、気づいていないだけのことではないかね?
我々は男であり、女である。おそらく、どちらかだろう。それはそうであって然るべきだが、このことにどれほどの意味があるね?
女の時代の今、彼女たちは自らの性に誇りをもっている。女同士の連携をつよめ、みずからの地位をまもることに懸命となる。
女の連携とは、主に三つの理由によっている。一つに自らの性の優位のため、そして同じ土俵にたつ女同士のゴマのすりあい、最後に強敵となった女同士への警戒となる。
つまり、おのれの地位と優位をまもるための保身であり、目新しいものはなにひとつない。この種の連携は、これまでも似たようなことが繰り返されてきた。人種間のそれであり、身分間のそれである。
支配者階級は、自らの地位を守るという点においては、おなじ地位に就く者を非難することはなかったはず――。多人種の国でも、人は同人種の保身のために奔走する。いつも時代も、どこの地域でも、人がやることにおおきな大差はないよ。
どちらにせよ、そうまでして自分のことが大事かね? なにより、くだらないことにムダな神経をそそいではいないかね?
我々は、男か女かのどちらかである。その他の第三者であってもかまわないが、二つでさえうまくいっていないのに、それ以上になったらどうなるね?
我々は、男女のどちらかである。それはそうであるわけだが、それがあなた自身にとってどれほどのものかね? あまりにも、それに支配されすぎていないかね? あなたは、本当にあなた自身を生きているかね?
考えてごらんよ。
宇宙が誕生して150億年もの時間がながれた今――。
今ここにあなたはいる。それをあなたはどう思うね? そして、これまでどれほどの生命が誕生したというのかね? これからは?
無限の時のながれのなかで、我々のたったの100年が、偶然にも今ここに当てはまることを奇跡といわずしてなにを奇跡と呼ぶね。
その奇跡も、どうせ過ぎ去りし日の幻となるのだよ。我々の命など、点にもおよばぬ存在なのだから。
我々は、いったいなにに支配されて奇跡の時間をゆくね?
確かに、そうかもしれない。人は、どうあっても洗脳からのがれられないものかもしれない。それなら、せめて納得のいく洗脳をされてみたいとは思わないかね?
そもそも男であり女である、真のあなたはどこにいったのかね?
椎名蘭太郎