先週号でも触れましたが、私の所にはいまだに知人からオファーが来続けています。私のクライアントは 8割以上が海外の政府機関か民間企業です。政府機関の場合は中小企業の支援事業関連が多いので日本と何らかの形でビジネスをしたい外国の中小企業が増加しているということでしょう。それに対応できる日本の窓口が圧倒的に不足しているような気がします。この背景には国際化できない悲しい日本の現実があります。
まずは英語力のなさです。私自身は「自分にできること、できないこと」をクライアントにまず明確に言うタイプですので、できない場合はその分野の専門家を自分のネットワークを通じて探し出します。相手は中小企業なのでできるだけコストを押さえようとすれば、専門家でかつ英語が話せる方という条件になります。大企業の社員ならいくらでもいると思いますが、自由に動ける中小企業の経営者あるいはフリーランスの方となると該当者がほとんどいなくなってしまいます。中国でもベトナムでも年々英語のできる専門家はすさまじい勢いで増えています。専門分野を持ち、それが英語でできればビジネス・チャンスは確実にふえるので実に残念に思います。
次に集団分業主義の効率の悪さ。たとえば市場調査などの場合、大手の調査・コンサルタント会社に依頼すれば営業の窓口と調査の担当者は別、日本語でできた報告書を翻訳会社に外注して英訳するというのが普通です。ところが私の場合は自分で調査し、英語で最初から報告書を書きますので、時間もコストも圧倒的に少なくてすみます。輸出の船積みにしても同じで、総合商社では商談、伝票、船の手配、船積書類作成、と何人もの手を経てやっていますが、私はすべて一人でやり、全責任を負います。こんな効率の良いことはありません。
そして、プロといいながらプロではない人たちの多さ。会社員の頃、米国から弁護士が来るので関税法に関する文書を英訳しなければならない事がありました。急なことだったので土日に自宅でやる事にしました。当時の私は仕事の終わるのが夜の11時から12時で食事も夜中に 1食という生活でしたので、上司が心配して、外注したらどうか言ってくれました。会社でよく依頼する翻訳屋さんに電話をすると責任者らしい男性が出て来て、「自分は英語の事はわからない、専門的な翻訳を出来る者がいるかどうかは週末だから無理、英文和訳なら良いが和文英訳の場合責任は持てない。」などと偉そうに言いました。私は二度とその会社は使わないことを心に決め、土曜日に自分でやってみたところ所要時間 1時間ほど。おかげで米国の弁護士には気に入られ、社内でも関税法を英語できる大家となってしまったのです。何事も自分でやってみるものです。
私とは異なる専門のコンサルタントに見積を依頼した時のことです。まずは見積の仕方がわからないと言われ、唖然としながらも懇切丁寧に教えました。出て来た見積には知人と一緒に業務を遂行すると書いてあります。ご本人に業務遂行能力がないのか、下請けに出すのかわかりませんが、外部の人を入れるかどうかは機密保持の問題やその人が適正かどうかの判断も必要です。先に外部の人を入れても良いかたずね、またその人の略歴も知らせるのが常識でしょう。
こんな方もありました。海外からの要件に対し、こんなやり方ではできないと自分の意見をメールに書きたて 2~3日経過後、資料を入手できたから作業を始められる状態にあるので指示してください、と言い出しました。理由もなく最初の話とは 180度の展開です。私からは「依頼事項に対する見積とその他提案があればお願いします」と文書でお知らせした反応がこれで、見積は結局出てきませんでした。
これらのお二方はいずれも私よりかなり年上の男性です。国際的にはプロとしてとても通用しないでしょう。日本のビジネス社会は男性には甘い、あるいは層が厚いと言うべきでしょうか。もし女性でこんな人たちだったらとっくに淘汰されているに違いないからです。
河口容子