この原稿を 2月22日に書いています。今日はベトナムの中部クアンガイ省ズンクアットでベトナム初の製油所が稼働した日です。ベトナムは高品位の原油産出国でありながら国内に精製設備を持たなかったため、石油製品を輸入に頼っており、昨年の原油高騰時には大きな打撃を受けました。私の日本のクライアントもベトナムでの生産が何とか軌道に乗りそうですが化学繊維やプラスチック製のパッケージなどベトナム国内の調達が困難で苦労しています。この製油所のおかげで一気に問題解決が進むわけではありませんが、ベトナムの中部地域は今後石油化学産業の集積地として期待されています。
先週はベトナムの計画投資省ファン・フー・タン外国投資庁長官が来日、東京のホテルで開催された投資セミナーに行って来ました。相変わらずの超満員で補助席が用意されるほどの盛況ぶりです。ベトナムへは昨年の春以来行っておらず、しばらくごぶさたの感もあったのですが、ベトナム大使館の商務参事官、商務官も「お元気でいらっしゃいましたか?」と温かく迎えてくれました。
セミナー講師の一人として来日されているJICA専門家の I氏を上述の日本のクライアントとともにハノイのオフィスにお訪ねしたのはもう3年前のことになります。 I氏にベトナム生産の現状を報告すると「ビン・ズオン省か、南ですね。うまくスタートできて良かった、良かった。」と大喜び。
このエッセイでも昨年ベトナムを直撃した経済不安についてふれましたが、それでも2008年の GDP成長率は 6.2%で、2009年も 6.5%の成長率が予想され、日本とは大違いです。もちろんアジア地域内では中国に次ぐ成長率を誇っています。ベトナムの輸出品目で世界一は胡椒、世界 2位は米とコーヒー、世界 3位は靴とカシューナッツ、ゴムは世界 4位、水産品は世界のトップ5です。読者の皆様にとって意外な商品がありましたか?
アジアの新興国は外国投資に依存する部分が大きいのですが、世界中からのベトナムへの投資はこの20年間で9707案件、認可された投資額の総額は1454億ドルです。これは何と GDPの54.6%、工業生産額の35%に貢献しており、 146万7000人分の雇用を創出しています。日本からの投資は昨年 105件認可されていますが、投資認可総額では73億ドルと過去最高の数字です。このうち62億ドルが出光興産、三井化学他による精油所・石油化学コンプレックス建設案件です。一方、ベトナム国内でも起業の奨励を行っており約35万社の民間企業があるそうです。8616万人の人口のうち30歳未満が何と60%以上ですからこの活力はまだまだ続きそうです。
とはいえ、世界同時不況の影響は少なからずあり、米国、EU、日本の急速な景気後退により輸出産業の中には操業短縮、一時帰休、希望退職を行っている企業もあるようですが、内部組織の見直し、社員への再教育の機会ととらえている企業もあるようです。逆の目から見れば、ここ数年が外資の進出が急増、人材の確保が懸念されていましたが少人数なら採用は容易になっており、離職率も低下しています。不動産もかなり下落している地域もあるとか、「今が狙い目」と力説する講師陣でした。
河口容子
【関連記事】
[311]危機を克服するベトナムと新しいハノイ
[295]ベトナムを襲う経済不安