フィリピンの小さな島マリンドゥクエに石けんを作ることを教えた日本人女性、堆肥作りを教えている日本人男性の話を取り上げて来ましたが、今回はこの無名に近い島に日本人の血を引く子どもたちがたくさんいることを上述の日本人男性 Kさんのメールからご紹介します。
「この島には日本軍が上陸しなかったので、対日感情はすごくいいです。みんな日焼けをして、おっかない顔をしている人でも、とてもいい人たちばかりです。財布が盗まれるなどの心配は無用の島です。
また、フィリピンの女性が「ジャパ行きさん」として日本に来て働かざるを得ない現実も分かりました。私が宿泊した民宿の地域にも、日本人男性との間にできた子供が10人以上おり、だれもが父親の顔が分からず苦労しているとのことでした。
公務員の給料が12,000ペソの世界に日本円で25,000円も仕送りできれば、一家が十二分に生活できるからです。 ジャパ行きさんは貧困の犠牲者なのです。帰りの飛行機(ジャンボで満席でした)には、日本人の比較的高齢者とフィリピン女性(30代くらいかな)と、その子供という組み合わせが何組も搭乗していました。彼女たちは日本人男性に捨てられることなく生活できているしあわせな人だと思いました。
話題を変えまして。マリンドゥケ島はなにもないので、これと言った観光資源も開発されていません。自然がそのまま残っている島です。水はきれい。人はいい。娯楽施設はない。のんびり暮らすには、うってつけでしょう。日本円にして1日 2,000円もあれば、なに不自由ない生活が送れますから。珊瑚礁だけでできている浜辺は圧巻です。(廣くはありませんが)
私の知り合いは個人資産の多くを投げ出し、現地の人の雇用と日本人が長期滞在できる施設を当島に建設中です。できあがるまで、あと1年以上はかかると思いますが。」
たくさんの情報を下さった Kさんにあらためてお礼を申し上げるとともに感じたことがいくつかあります。ひとつは、貨幣主義の洗礼をたっぷり受け、自分のことしか考えなくなっていると思われがちな日本人にも自分のできる範囲で貧しい人々を何とかサポートしようとする方々がまだまだいらっしゃる事です。営利主義や売名行為、あるいは単なるヒロイズムの正反対に位置する立場に美しい自然な交流が育まれているような気がします。このような方々こそ、もっと讃えられるべきではないのかとも思います。
また、フィリピン人は損をしていると思います。東南アジアきってのラテン気質が誤解され、ビジネス界では「いい加減」と敬遠されがちです。反面非常にあっさりしていて、ホスピタリティにあふれている人が多いのも事実です。2002年に国際機関のお仕事でルソン島の最南端を訪問しましたが、戦後の映画のセットのような街や多くの方々から受けたご親切を思い出しながらマニラへ向かう帰りの飛行機では涙が止まりませんでした。
私の住んでいる地域でも時々フィリピン人の奥さんたちを見かけます。日本人との間にできた子どもに一生懸命片言の日本語でしつけをしています。言語も文化もまったく異なる国にやって来て子どもを産み、育てる女性の勇気と子どもへの愛を痛感する一瞬です。一方、母国に夫と子どもを残し、看護師やメイドとして海外で働くフィリピン女性も非常に多く、こちらは一家の大黒柱です。フィリピン女性はアジア一の「肝っ玉母さん」かも知れません。
河口容子