[379]嗜好品の輸出市場を探る

私の日本のクライアントに癒しや健康に関する雑貨のメーカーがあります。今流行りの「ゆるキャラ」(あまり個性を出張しないキャラクター)もいくつかあります。商品の約 9割を中国生産に切り替えてから価格でも勝負できるようになり、この冬はテレビ番組で何度も取り上げられ、日本ではよく売れている商品たちです。

現在輸出に力を入れていますが、韓国市場向けは全体の売上の 1割近くすでにあります。現地パートナーに恵まれたおかげでもありましょうが、キャラクターものが得意な韓国でわざわざ日本のものが売れるとは不思議な現象です。最近の日韓の消費者は互いの文化を吸収するのに必死なようで、見近な外国ゆえの違いや類似性を見つけるのが楽しいのかも知れません。

その割に香港、中国、台湾が伸び悩んでいます。香港、中国市場へはずいぶんいろいろな商品を輸出した経験がありますが、何でも 3ケ月あればコピー商品や類似商品が出て来る市場です。高収入で知的レベルの高い層以外は本物である事に日本人ほどこだわりません。それに日本製品は欧米製品と同じ位置づけです。機能や品質を重視する商品なら日本製を買っても、ライフスタイルやデザイン性となると欧米へのあこがれはなみなみならぬものがあります。

先週号に出て来るパリ在住歴10数年の日本人男性 N氏とフランス人女性 A女史に聞くと、フランスではキャラクター商品に代表されるかわいい文化は思春期までで大人は買わないとのこと。「癒し」というと「禅」、つまりシンプルなフォルムにナチュラルカラー、自然素材のものをイメージするのだそうです。そもそものんびり、個人主義的傾向の強いフランス人に「癒し」なんていらないではないかというのが私の持論。そしてケチだから雑貨は売れないと言うのです。これも私に言わせれば、日本人ほど年中だらだらと買い物を、しかも衝動的に行う人種は日本人くらいしかいないと思います。最後に中国製との競争。何とコピー商品をすでにパリで見つけたというのです。同じ価格なら当然日本製を買うでしょうが、雑貨でどこまで価格差が受け入れられるか頭の痛いところです。

年末にはベトナムへの輸出をスタートさせましたが、次のオーダーが入ってくる所です。この日本メーカーは途上国向けには「高すぎるのではないか、廉価版を別に作る必要があるのでは」と考えていましたが、私は「日本人が使っているものと同じだから価値があるのです。バージョンを下げて安くしたところで中国製に勝てますか?」と反対しました。特にベトナム人は品質を重視し、プライドが高いのをよく知っているからです。

まったく商品は異なりますが、コンスタントに輸出しているものの飛躍的な伸びがないのが日本酒です。酒造メーカーの団体などで上海や香港の見本市に出展したり、市場視察には行ったりしていると聞きますが、そこから先には進まないようです。香港側からすれば、あまりにも銘柄が多すぎ、違いがわからない上にもともと南国でお酒を大量に飲む習慣がありません。グルメ地域でもあり世界中の料理とお酒が楽しめます。コンテストで金賞を取る日本酒はだいたい辛口。香港ではワインで言うならばライトボディでフルーティな日本酒が好まれ、コンテスト優勝の銘柄とは必ずしも一致しません。

国内市場がだめなら海外へ活路を見出そうといろいろな業種が模索しているようですが、「ものづくり日本」もこと嗜好品となれば市場の「違い」との闘いです。

河口容子