先日、都内の某一流ホテルにて中国広東省佛山市三水工業区の投資セミナーが行なわれました。最近は中国関連の投資セミナーや見学ツアーがたくさんあります。全般的なもの、あるいは省や市単位のものはよく目にしますし、いくつかは行ったことがありますが、私にとって工業団地単位の投資セミナーは初めてでした。
私自身もセミナーの講師をやらせていただくことがありますので、実はセミナーの進行や講師の様子というのは、大変関心があり、学びの場でもあります。今回は区長と副区長、つまり行政区の公務員がプレゼンをやってくれるのですが、にこやかでプレゼン慣れしていることにまずびっくりです。工業団地をDVD で紹介するコーナーもあり、他の国の観光局や工場誘致のセミナーと何ら遜色がありません。
この工業団地は18万平方キロですでに世界中から2600社以上が進出しています。その名の通り、三つの川に囲まれ、川口に港を持つという中国ならではのスケールの大きさです。高速道路が集まっており、広州の新白雲空港、トヨタ、ホンダ、日産の各工場からも数十分という利便性がうたい文句です。もともと広州市のビジネスマンの保養地として開発されたエリアでもあり、風光明媚、物価も安く、ゴルフ場に四つ星ホテルがすでにあり、五つ星ホテルの建設も予定されています。
[125]皿回しの発想
尖閣諸島の領有権をめぐって反日運動が中国で目立つようになってきました。また今年は戦後60年にもあたり、南京ではすでに反日運動が始まったとのニュースも聞きました。日本製品のセレクトショップ展開をしている香港のビジネスパートナーは今年業容を拡大する予定でいたのですが、当局から日本と関連を強めるにはタイミングが悪いと耳打ちされたそうです。どうも政府自体がこうした反日運動を誘導しているとの噂もあちこちから耳にします。
これが先々週で取り上げた中国の「カントリー・リスク」です。特にこういった政治がらみの感情的なカントリー・リスクの前には、一人よがりの努力や誠意は通じないため、リスクを縮めて時を待つしかありません。幸い、私たちは自由市場である香港も持っているので、こういう時期は本土にはあまり力を入れず香港市場に注力することにしています。たくさんの仕事をかかえ、ただでさえ忙しいのに、ビジネスパートナーの兄弟たちが日本製品のビジネスにこだわる理由は日本が好きだからです。彼らの父親は広東省の貧しい農民の出身でした。学校にもろくに行けず香港に出て来て日本のカメラメーカーのレンズ職人となりました。退職するとき日本で日本の職人に指導してほしいと言われたそうです。何の学歴もない中国人の一職人をそこまで評価してくれた日本の企業に彼らは今でも感謝をしています。そして父親への誇りが日本製品に関するビジネスへの情熱とつながっているのです。この思いに私も精一杯応援しています。