最近の中国の発展には目覚しいものがありますが、ふだん中国と縁のない方にとっては、漠然と中国の国全体を地図で思い浮かべることができても、各省や主要都市がどの辺にあるのかほとんどわからない方も多いことでしょう。汎珠江デルタ経済圏、別名9プラス2、が中国政府の全面支援を受けて誕生したのをご存知でしょうか。9というのは広東省、江西省、福建省、湖南省、貴州省、四川省、雲南省、海南省、広西チワン族自治区をさしていい、2は香港行政特別区とマカオ行政特別区のことです。
なんとこの地区の総人口は4億5600万人、広さは200万平方キロ、域内 GDPは約70兆円です。5月1日から25ケ国に拡大したEUに人口が匹敵、面積は半分に相当します。ご承知のとおり、広東省は中国の輸出の約半分を担うエリアです。また、昨年の中国の個人平均年収でもトップが深セン市、そして広州市、上海市、北京市、天津市という順序で、トップ2は広東省です。つまり市場としても有望で、隣には国際金融センターの香港を抱えるという条件に恵まれた新経済圏です。
おまけに日本より先にスタートするアセアン諸国との FTAも中国はここを玄関口にしようと考えています。香港がアセアン諸国にいかに近いか、地図で確認されればおわかりでしょう。また、雲南省は山奥のイメージからアセアン諸国との貿易で一気に開けました。ラオス、ミャンマー、ベトナムと国境を接しているからです。この経済圏は陸路でもアセアン諸国とつながるのです。
[090]教育ビジネス市場としての中国
日本にとって、中国はまず生産拠点、安い労働力を利用する場所でした。そして中国にも中産階級が台頭し始めると次に消費市場として考えられるようになりました。次にクローズ・アップされているのが教育市場です。知人の上海パートナーである調査会社が中国の教育市場に関するセミナーを東京で開きました。世界中の著名企業を数え切れないほどクライアントに持つ調査会社です。
中国では、文革のあおりで勉強をすることができなかった世代50代以上はすでに第一線から退いており収入も少ない層です。彼らの子どもたちである20代後半から40代前半は親に教育にお金をかけてもらい社会でリーダーとなっています。この上海の調査会社の社長もまだ32歳です。また、一人っ子政策になってから生まれた子どもたちが25-6歳になっており、それ以降の子どもたちは両親とその祖父母という 6つのポケットを持つ恵まれた子どもたちです。
中国は実力社会です。少し前ならカンや度胸、根性だけ立身出世ができても今は完全に学歴や資格社会になっています。歴史的に失業率の高い国だけに子どもたちにできるだけいい教育をつけさせたい、というのが親心のようです。国家としても高等教育への進学率を上げたい、識字率を改善したいという方策を出しています。小学校から大学まで全国に50万校あっても巨大な人口をとてもカバーできるものではありません。 5年前に私立大学が解禁となり、昨年は外資との合弁の学校設立が許可されるようになり、大都市ではたちまち語学学校や予備校まで現れるようになりました。科挙の時代から、元祖「お受験」国家だけのことはあります。