[063]日本人の知らない日本人の歴史(1)

 読者の方のほとんどは日本で教育を受けておられると思いますが、下記のような歴史をご存知でしょうか?長野県南相木村診療所長の色平哲郎先生が「日本人が知らない石垣島に残る唐人墓」と題して書かれたものを、ご本人の許可をいただいて下記に転載します。
(引用)
 日本列島西南端の沖縄県石垣島、この島に所在する「唐人墓」について沖縄以外に住む日本人はほとんど何も知らない。唐人墓には、およそ次のような碑文が刻まれている。
 唐人墓には中国福建省出身者128人の霊が祀られている。1852年2月、400人余りの苦力(クーリー)が、厦門(アモイ)港から米国船ロバート・バウン号でカリフォルニアに送られる途上、辮髪(べんぱつ)を切られたり、病人を海中に投棄されるなどの暴行に堪えかねて蜂起し、船長ら7人を打ち殺した。船は、石垣島沖に座礁し、380人が島に上陸した。石垣の人々は、仮小屋を建て、彼らに住まいを提供した。しかし米国と英国の海軍が三回にわたり来島し、島に砲撃を加え、上陸してきびしい捜索を行った。中国人労働者は山中に逃亡したが、百名以上が銃殺され、逮捕され、自殺者、病没者が続出した。島民は深く同情し、密かに食糧や水を運び、中国人側の被害が少なくするよう配慮した。そして事件処理に関する国際交渉に取り組んだ結果、翌1853年9月、琉球側が船二隻を仕立て、生存者172人を福州に送還した。中国ではこの事件が契機となって大規模な苦力貿易反対の機運が盛り上がった・・・
(中略)
 反乱時、逃げのびた米国船の船員が中国沿海部にいた英国海軍に通報し、追及が始まった。しかし当時、(薩摩藩の支配下にあった)琉球王国の八重山政庁や島民は中国人労働者をかくまった。米英は島に砲撃を加え、武装兵を上陸させて捜索を行い、中国人たちは銃撃、逮捕、自殺などでどんどん減っていった。島民は彼らに食糧などを援助し、死者は丁重に葬られた。島民は捜索にあたる米軍と英軍にも食糧と水を提供し、なだめている。

“[063]日本人の知らない日本人の歴史(1)” の続きを読む

[059]中国へ押し寄せるライセンスビジネス

 11月 4日から 6日にかけ、東京ビッグサイトで「ライセンス アジア2003」という国際的なライセンスビジネスショーが開かれました。最終日に「香港―中国市場新規参入への掛け橋」というタイトルのセミナーがあり、 1ケ月前に申しこんだところすでに満席となっていたのにはかなりショックでした。実は私と香港のビジネスパートナーは日本のあるキャラクターのライセンスビジネスを中国でスタートさせたばかりで、かなり先見性があると自負していたからです。もちろん、多くの方が関心を持ってくれれば市場は大きくなります。反面、競争も激化するということです。
 現在、アジアのライセンス市場は100億米ドルで、そのうち日本がダントツの 1位で88億米ドルです。2位は桁が違う 6億米ドルとはいえ何と中国なのです。そして、これが2010年には16億米ドルの市場になると予想されます。
 中国におけるライセンス・ビジネスは 76%がキャラクターで 20%が登録商標です。そして対象となる産業(製品)としては玩具およびゲームが 55%、アパレル 53%、文具 40%、子ども用品 39%となっています。チープな商品もあれば偽物もありますが、ライセンス・ビジネスといった知的所有権ビジネスも中国にはいつの間にか育っていることがわかります。
 「中国は日本の何十年前と一緒」というような表現をされる方が結構いらっしゃいますが、それは違います。先月、私たちはある日本の工業団体とジョイントで中国の 4都市で消費者に対する聞き取り調査を行いました。もちろん日本とは経済格差があり、金額ベースでは比較になりませんが、可処分所得率は中国のほうが高いのではないかとさえ思えます。まず、若年層は一人っ子で、 6つポケット(両親と祖父母たち)を持っています。社会主義のお国柄でワーキングウーマンがほとんど、しかも男女の賃金格差はありません。ぜいたくさえしなければ食も住も安い。日本とは社会構造が違うことを見落としてはなりません。
 私自身は会社員時代、米国の巨大スポーツブランドの他、米国のアウトドアアパレルブランド、イタリアのスポーツブランドの担当をしたことがあります。また、欧米のファッションや宝飾品ブランドの交渉経験も数多くあり、知的所有権ビジネスは自分の強みのひとつです。また、ビジネスパートナーは知的所有権を得意とする弁護士です。中国では外国の企業には規制されているメディア・ビジネス(出版、放送など)の権利も持っております。凝り性のパートナーたちは自らライセンサーとなり、おまけに自力で流通網まで作ってしまったので、管理体制も万全のはずですが、いかがなりますことやら。
 キャラクターのライセンスビジネスは製造業と違い空洞化しません。管理さえ失敗しなければ、日本以外にどんどん市場を拡大することができます。また日本ではすたれたキャラクターも違う市場で甦れば、新たな収益を生んでくれるかも知れません。違う市場向けに仕様を変えたキャラクター商品が日本に逆輸入されて人気になる、ということもあるでしょう。アニメやキャラクターは今や日本のお家芸、中国でも日本の新しい顔として活躍してくれるに違いありません。
河口容子