[011]「そんな生活」と言われた驚き

 3週間にわたって自分の海外出張記を書かせていただきました。特に先週号では、香港のお金持ちも知恵や努力の結果ということをおわかりいただけたと思います。また、華人社会については香港のみならず東南アジアに広がる華人社会とおつきあいされる方にはヒントになったのではないでしょうか。
 このような話を日本のビジネスマンにおもしろおかしく話したところ、「正直なところ、そんな生活って辛くないですか?」という質問を何人かからいただきました。「そんなというのはどういう意味ですか?」と驚いて聞き返した私です。「女性がひとりであちこち行って商売して、時差もあるだろうし、慣れない所でずっと英語しゃべって暮らして、自分の会社なら徹夜したり、休みも取れないこともあるでしょう。嫌じゃないですか?」「私はサラリーマンも24年やりましたが、夜討ち朝駆けの世界でしたし、平々凡々として暮らすより楽しいですけれど。」彼らは一様にがっかりした表情を見せます。
 彼らの質問から正直な人たちだとは思うものの、同時に起業家にも国際人にもなれないと瞬時に感じます。なぜなら、決められた時間だけ言われたことをして、それもなるべく楽なことをしてお金を稼ぎたい、という価値感から出ているサラリーマン的発想の持ち主だからです。また、自分の価値感を中心にして、違う価値観の人を不幸だとか、本当は嫌なんだろう、と勝手に決めつけるのは世界という舞台に出た場合、独善的であったり、失礼なことを平気で言ったりする日本人になりかねません。政治、社会、文化と日本の日常では想像もつかない国というのはたくさんあるからです。

“[011]「そんな生活」と言われた驚き” の続きを読む

[003]日本最大級の見本市

 9月上旬に東京ビッグサイトで開催されたギフトショーに2日間行きました。出展者2200社、来場者18万人というパーソナル・ギフトと生活雑貨の日本最大級の国際見本市です。同行したのは香港の百貨店の社長以下買いつけチーム、そして香港の貿易業者です。私は別途香港資本の中国の専門店チェーンのための商品探しもかねていました。
 海外の見本市は商談の場です。当然、香港からやって来た彼らは新しい業者や商品の発掘が目的で、気に入った商品を見つけるとどんどん交渉を始めます(と言っても私が通訳をしながら自分も交渉に加わっているのですが)。納得したところで、香港人の彼らはブースにすわりこみ、自社のフォーマットの発注書にどんどん記入していきます。決済は日本円の前払送金ですから、業者にとってもリスクはありません。
 ところが、日本の業者側は恥ずかしいほどビジネスをする体制になっていないのです。発注書に記入している彼らを遠巻きにしてひそひそと何が起こったんだといわんばかりの企業、価格をたずねると「値段のわかる者は帰ったんです。明日なら来ますけど。」とあっけらかんとした企業。はなはだしきは「今日は商談はダメ、ダメ。」と偉そうに手で払いのける企業。あきれた企業、失礼な企業のこれも日本最大級の見本市です。

“[003]日本最大級の見本市” の続きを読む