[033]国際詐欺団

 ある日、知人が「外国から FAXが来て、私にお金を預けたいと言っているみたいなんだけど、どうして私の名前や会社の連絡先がわかるんだろう?よくわからないので見てもらえます?」知人は国内でアパレル関係の会社を経営していますが、海外との取引は一切ありません。英語もほとんどわかりません。「ああ、これは今流行の詐欺ですよ。お金を預かってもらったかわりにお礼をあげるといって、保証金などを前払いさせ、ドロンする手口です。」と答えた私に知人は、半信半疑ながらも見知らぬ紳士がお金を託してくれるという喜びもつかの間、落胆から怒りへと顔色が変化しました。知人の会社は万年資金難ですから本当の話なら、まさに「棚からぼたもち」だったのです。
 この手のメールや FAXはナイジェリアを中心に西アフリカの国から来ることが多く、起業して初めてもらった時は上記の知人のように行ったこともない国の見たこともない人がどうして私にこのような大事な話をよこすのだろう、私も国際的に有名になったもんだ、といううれしさとひょっとしたらこれが天運かも?と思いがちらと胸をよぎりました。
 しかし、冷静に自分が逆の立場で考えると、見ず知らずの人に大金を預け、法外なお礼を渡すわけがありません。差出人は政府高官であったり、元プリンスなどという VIPです。私にメールが来ると言うことは他の大多数の人にもたぶんメールが発信されているわけで、そんなことをしてまでも預けなければならない資金が本当にあるとすればまともなお金であるとは思えません。メールの中に「この資金は違法なものではありません」とわざわざ書いてあるところがますます怪しく見えます。
 ところが、世界中でこの「おいしそうな話」に引っかかる人は多いらしく、前払金を取られるだけならまだ知らず、現地にお金を持参して殺されたケースまであると聞きます。私など最近はこの手のメールが来るたびに今度はどんなストーリーになっているかしらと楽しんでいるくらいですが、 1日に同じ人から 3度もメールをもらった時はさすがに頭に来ました。
 この手の詐欺は日本から発信される場合もありました。一時多発した出資法違反的な詐欺ですが、何とインドネシアの友人がその会社に投資をしようとしていたのです。私が調べた段階ではその会社は日本では訴訟中でしたが、東南アジアに現地法人がいくつかありました。インドネシアでも華人のビジネスマンたちは日本のエリートサラリーマン以上の年収で、しかもダブルインカムの場合も多い。生活費が安いため、あまったお金をどんどん投資していきます。「日本の会社なら」という安心感を悪利用した手口です。
 経済のグローバル化とともに犯罪もグローバル化していきます。人間に一攫千金や楽して儲けようという意識がある限り、この手の犯罪は仕掛ける方も引っかかる方もどんどんエスカレートしていくような気がします。おいしい話は疑ってみよう、最悪の事態を考えて土地勘のない国、現地に信頼できる人がいない国とは取引をしない、というのが今の私の方針です。
河口容子
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 以前、何げなく見たNHKの番組でDNAのパターン別に日本人を調査すると8割程度が中国人か韓国人のパターンで、その次は南方系、一番少ないのは原日本人であるというのをやっていた記憶があります。つまり、人種的に言えば日本人は雑種と言えます。
 15年前、ニューヨークのレストランに行った時、韓国人、台湾人と日本人は髪型や服装で簡単に見分けがつきました。現在では、仕事でアセアン各国の方とよくお会いしますが、民族衣装でもつけていない限り、そして黙っている限り、日本人かしら?と思ってしまう方がほとんどです。
 実は私は海外では日本人と思われることがほとんどありません。米国で買い物をすればアジア系の米国人と思われ、香港では香港人に思われ、ついにはジャカルタからJALに乗ったところ、日本人の客室乗務員に英語で話しかけられびっくりしたことがあります。
 まさか、日本ではそんなことはないだろう、と思っていたものの、ある日お台場のレストランで食事をしていたところ、トルコ人のウェイターが英語で話しかけてきたので英語で5分ほど雑談をしましたが、彼いわく最後に「あなたは日本人ですか?」そのうち、あるパーティでフィリピンの民族衣装のブラウスを着ていたところ、トイレでフィリピン大使館の女性にタガログ語で話しかけられ困ったというエピソードもあります。
 先週も香港のビジネスパートナーが来日していました。私たちは英語で話しているので、最低ひとりは外国人と誰でもわかるはずです。ふたりでレストランなどにいると、日本人のスタッフが日本語で話しかけるのは9割以上の確率で香港人の方で、私には英語で話しかけられてしまいます。この状況は、見本市に行っても続き、英語で説明される事も多々ありました。最近は慣れすぎて私も英語で応対してしまうのですが、相手が説明に困っていると「日本語でも結構ですけれど」と言いますが「日本語わかるんですか?」要はまだ外国人だと思っているわけです。
 最初から日本語で接している人は私のことを日本人として思いこみ、そうでない場合は日本人でないと認識するようです。つまり、「日本で英語を話しているのは日本人でない」という変な方程式ができあがっているようで、これは日本人の排他性や英語教育の遅れを暗にほのめかしているような気がしてなりません。香港、フィリピンはもちろんそうですが、インドネシア、マレーシアでも特に貿易をやっている人の場合、同じ国民どうしで英語で商談をしている風景は不思議なことではありません。
 さて、インド人のスタッフが何人か働いているインド料理のお店に行きました。ここでは英語でオーダーが出せるので外国人のお客さんもたくさん来ています。私は香港人と一緒だったので終始英語で通しました。ここのインド人たちは日本語も話せるのですが、なぜか英語で話すお客さんには丁寧。特に女性には最上級のマナーで接してくれます。日本語で声高に話している日本人たちには、高いメニューを頼んでいるにも拘わらずなぜか冷ややかでした。
河口容子