[382]春節の挨拶

中国が台頭してきてから彼らの春節(旧正月)のニュースを日本でも目にする機会がふえるようになりましたが、東アジアではカレンダー通りに正月を祝う日本が不思議なくらいです。中華圏(中国、香港、台湾、シンガポール)はもとより、韓国も旧正月、ベトナムも旧正月(テト)、モンゴルもモンゴル暦による旧正月のお祝いがあるそうです。また、タイの旧正月はソンクーランと呼ばれる 4月の13日から15日までの祝日です。

中国では春節は旅行シーズン、田舎から都会に働きに来ている人たちは郷里へ帰りますし、都市住民は観光や買い物旅行に出かけて行きます。そして工場経営者にとって頭痛の種は春節後にどのくらい労働者が戻ってくるかです。また中国の工場と取引をしている日本企業も春節前後は連絡が取りづらかったり納期が遅れるのでこれも頭の痛い事です。

香港のビジネス・パートナーは年中、北京、上海、広州、貴州、ベトナムを飛び回っていますが春節だけは香港にいますので、春節のお祝いを伝えると「ありがとう!日本へ行く、行くと言いながらいつも延び延びになってしまい、いろいろな方に不義理をして申し訳ないと思っているんだ。今度は本気で日本へ行く計画をたてるつもりだから。」といつもの理屈っぽさはどこへ行ったのやら、正月気分満開です。実は2007年に札幌に講演にやってきたのですが、その時もとんぼ帰りで会えずじまい。もう 3年以上会っていない気がします。「それではホ・ン・キで考えてくださいね。」と半信半疑の私。

彼のところの広州オフィスの女性スタッフからもメールをもらったので、春節はどこかへ行ったの?とたずねると、うれしそうに「郷里へ帰りました。同じ広東ですが広州から電車で 2時間です。」と答えてくれました。

シンガポール国際企業庁に勤務していたC女史はここ 2年くらいの間に 3度転職を繰り返しています。本部長クラスでの転職ですから、いわゆる天下りの渡りなのか、他にいろいろ事情があるのかよくわかりませんが、春節のお祝いとともに「新しい職場はいかがですか?もちろんすべて順調だと思ってはいますけれど。」とたずねると「ありがとう。楽しくやっているわ。」「そうそう、日本の大使館に駐在しているSさんに協力していただくつもりだったけれどずっと忙しくて連絡を取っていません。これから連絡しますね。」Sさんはシンガポール人の女性管理職でC女史の元部下です。「Sは今シンガポールよ。今晩私と食事をすることになっているわ。」Sさんとは東京で一度会ったことがあり、何度かメールでもやり取りをしましたが、果たして私のことを覚えているかどうか不安でした。C女史からも伝えてくれることは間違いなしでラッキーでした。

その後、Sさんとやり取りをすると「連絡を下さってありがとうございます。お元気そうで何よりです。ご依頼事項について本国のスタッフと一緒に検討をしますのでお待ちくださいね。」との事でした。彼女からも春節で里帰りしたのでリフレッシュしたウキウキ気分が伝わってきます。

日本のビジネスマンも国際化したとはいえ、クリスマスカードを出したり、クリスマスのない中東圏へ年末年始の挨拶状は出したりするものの、近隣諸国の旧正月のお祝いに対する配慮が足らないような気がします。逆に考えると彼らから年賀状をもらう事もないので、お互いに「変な時にだらだらと休まれて困る」と内心思っているに違いありません。

河口容子

[365]アセアンへの投資 いよいよ選択の時代へ

 アセアン10ケ国のうち日本からの投資と言えば今はベトナムがブームのようです。日本人の特徴として「バスに乗り遅れるな」とばかり、集団で同じ国に出かけて行きます。中国もそうでした。確かに一斉に同じ国に行くと裾野産業や物流業者などサービス業も進出してくれるので便利な面もありますが、度が過ぎると進出国内での競争が激化します。
 今までアセアン諸国への投資セミナーというと当該国の政府からゲストを迎え投資のメリットや誘致したい産業について講演、プラス日系企業の進出経験談というパターンで国ごとに行われてきました。複数国でそろって行われたのが2008年 1月24日号「5ケ国外相がそろったメコン地域投資セミナー」と2005年12月 1日号「南の島へのあこがれ BIMP-EAGA」くらいのものです。
 最近になってやっと「比較して自社に最も適した国を選ぼう」というテーマのセミナーが開催されるようになりました。この現象は「そういうニーズがふえた」「各国への進出例がふえた」「各国がそれぞれの強みを上手にアピールするようになり、受け入れ態勢も整いつつある」証左であり、日本とアセアン諸国それぞれの国際化が進んだと思って良いのではないでしょうか。
 私たち貿易人の通念とすれば、「遠い所はコスト安だが運賃と日数がかかる」「コストの高い国は裾野産業も発達しており部品調達が安易、安ければその逆」です。たとえば特殊な素材や部品を寄せ集めて作るファッション雑貨などは中国なら地場で調達が可能ですが、ベトナムではまず無理です。組み立て産業なら人件費は比較的高くても調達力でタイがまだ有利です。そのタイの下請けとしてラオスが有力です。メコン川を渡っただけで人件費が 1/3になり、タイとは文化が似ているためタイ人の管理職をラオスに派遣することが可能です。そうすれば日本人駐在員も削減できダブルでのコスト削減につながります。
 少し驚いたのはカンボジアの繊維製品の価格勝負はそろそろ難しくなりつつあるそうです。思えば、会社員の頃スポーツウェアをカンボジアから輸入し始めたのは10数年前です。大量に生産されるものなら裁断した布を送って縫製をしてもらうだけですから、カンボジアからさらに安い所へ移って行く時期なのでしょう。比較的習熟が簡単で女性の職業の確保にも縫製の委託は途上国にとって経済の底上げに本当にありがたい仕事だと思います。現在、カンボジアでは官民で農業プロジェクトが行われているようです。
 ミャンマーについては「眠れる獅子」状態だと思っています。労働力は圧倒的に安いものの日本まではマラッカ海峡を渡らねばなりませんので日数がかかります。また電力などインフラ面でも問題が多く、為替レートが二重価格というのも困りものです。
 インドネシアは人口2億数千万人をかかえる資源大国かつアセアンの盟主でありながら地盤沈下した感があるのは、1970-1980年代の投資ブームが一巡したからとも言えます。私自身はインドネシア華僑とのビジネス経験が長いのですが「インドネシア華僑はユダヤ人よりお金に厳しい」「インドネシア華僑とビジネスができれば世界中で通用する」とよく聞かされました。そのせいか後日イスラエルの方々とビジネスをした時には天使のように思えました。
河口容子
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