インターネットの発達により世界中の人に手軽にそして電話のような気軽さで手紙を出せるようになりました。私にとって不快なメールが何種類かあります。まずはウィルス・メール、でもこれは機械的にチェックする事が可能です。次に詐欺メール、これは第33号「国際詐欺団」で詳しく書きましたのでそちらをご参照ください。そして次に不快なのは、知らない人からの厚かましい問い合わせメールです。
「検索をしたらあなたのメルマガが出てきたので」というような書き出しから始まるメールを時々いただきます。そのあとは一方的に自分の質問を書きたて最後に「教えてください。よろしくお願いします。」と結んであります。リストに従って送り出される何かの売り込みのメールなら関心がなければ削除するという選択権が自分にはあります。ところが、まったく知らない人からいきなり個人的な質問に答えてほしいと言われても当惑するだけです。メルマガの内容も読んでいないのでしょう。なぜ私に聞くのか、というような質問です。道でたまたますれ違う人にその質問をしてみたら答えてくれるでしょうか。頭が変だと思われるだけです。私も返事はしません。
初めて仕事関係のメールをもらう場合、どこで私のメールアドレスを知ったか書いていない場合は一切信用をしないことにしています。ビジネスというのはお互いの信頼関係がない限り成り立ちません。通常は相手の信用を得るために「○○さんから紹介されました」とか「△△のサイトで御社のことを知りました」と書くのが普通です。
次に信用を得るためには自分の情報も開示します。ホームページを持っていればその URLをつけておくとか、簡単に自社の業容を説明します。ところが最近は何の会社か、住所はおろか国名すらわからないようなメールも来ます。もちろんこんなメールにも返事はしません。
ある日、SOHOの方に仕事の電話をしたところ、奥様が出られて留守ですと電話をきられました。すぐ、ご本人から謝りの電話をいただき「セールスの電話が多いのでいつも留守と答えるようにしているので家内がきってしまいました。」とおっしゃるのです。用心にこしたことはありませんが、過剰な防衛によりビジネス・チャンスを逸していることがあるのではないか、そして同時に善意の電話もつながりにくくなったことを痛感しました。
ましてや、メールという手段では相手の顔も見えないし、声を聞くこともできません。その場で質問することもできません。それをいいことに最初の例のような「恥はかきすて」のような人も出てきますし、悪質な詐欺の温床ともなります。知っている人どうしにとってメールは大変便利な連絡手段です。しかしながら、知らない人から初めてもらうメール、あるいは知らない人へ初めて出すメールはとても神経を使う時代になったといえます。
河口容子
[019]ITのチカラ
先週取り上げた「日本アセアン交流年2003」の記念行事としてITによる貿易情報に関するワークショップが開催され、私もビジネスマンの代表として短いプレゼンテーションをやらせていただきました。
WINDOWS95 が出てから、自宅にもパソコンを買いインターネットも始めましたが、ここで自分の働いている総合商社に対してかなりの危機感を持つことになります。総合商社というのは早くから情報産業とも呼ばれ、国際電話がべらぼうに高く、FAX の影も形もなかった時代にテレックスのネットワークで世界中と交信できました。おまけに地球の隅々まで駐在員を置くという人海戦術とあわせると大変な投資をしてビジネスをしていたわけです。それに引き換え、サラリーマンの小遣いで買えるパソコン1台で、通信から情報収集、きれいな書類も作れるわけです。しかも、私が自宅にパソコンを買った時は会社でひとり1台パソコンが支給されていませんでした。それから、常に自宅のパソコンの方が会社より新しいバージョンのOSやソフトがあり、会社で「ああ家に帰ればもっと早く仕事ができるのに、こんな事もできるのに」といらいらするようになった挙句、独立して仕事ができると思えるようになったのもこのITのチカラでした。
私のように海外と仕事をする者にとってはインターネットはなくてはならないものです。通信にしても電話やFAX をいちいち使っていたら通信費はとんでもないものになるからです。また、オフィスにすわったまま、世界中の情報を入手することが可能で、かつ最近は貿易サイトが充実しており、特にB2B サイトでは世界中から取引先を見つけることができます。私は2000年の10月からいくつかのB2B サイトを利用しておりますが、スパムメールも含め玉石混交ではありますが、現在までに200件以上の引合を入手しました。
今回のワークショップではアセアン各国の貿易サイトのにつき各国の担当者からのプレゼンがありましたが、正直なところビジネスマンレベルのIT力、英語力は日本はアセアン諸国以下ではないかと感じました。ミャンマー、カンボジア、ラオスなどの政府の貿易情報サイトを見る限り日本もうかうかしていては取り残されると思うほどです。考えてみれば、一部の国を除けば、公用語が英語の国もあるし、欧米の植民地という歴史を持つ彼らの方が、日本人より欧米の感覚を身につけているのかも知れません。彼らはITのチカラを借りて一気に追いつこうと必死です。
ワークショップのあとのレセプションで耳にした話ですが、ODA である国にパソコンを1 億円送ったそうです。ところがどっとクレームが来ました。なぜならOSがすべて日本語版であったからです。私も時々あるのですが、日本のメーカーのCDカタログを海外の取引先にあげたのですが英語のOSでは起動すらしなかったという経験があります。また、日本のビジネスマンの多くは名刺にメールアドレスが刷り込んであるものの使っていない(使えない?)人も多く、「メールをしましたのでご覧ください。」とわざわざ電話で確認をしなければならない事や1 月もたってから返事をもらう事、ひどいのは簡単な問い合わせの返事すら来ない事もあります。日本におけるITは設備としては普及しましたが、ビジネスでの活用度は二極分化が進んでいるような気がします。
河口容子