「天天向上」これは中国の学校などでよく言われる言葉で「日々向上する」という意味だと中国ビジネスをしている知人に教えてもらいました。経済発展においても中国はまさにこの言葉通りのような気がします。2004年 6月18日号「教育ビジネス市場としての中国」というテーマでも取りあげさせていただきましたが、中国は人口が多いために歴史的に就職難、またかつての日本企業のように入社すれば会社が手取り足取り教えてくれ、ステップアップするための研修をしてくれ、勤続年数に応じて昇格、昇給までしてくれるような風土にはありません。自分の実力で良い労働条件を勝ち取るのです。
中国ではすでに求人と求職のミスマッチが起きていると聞きます。ミスマッチが起きるということは高度な専門技能を要する人がさまざまな分野で必要になること、また第二次、第三次産業の発達を意味すると思うのですが、中国はすでにその域に達しています。都市へ出稼ぎに行って非熟練工としてこき使われるよりは農村に残って農業をするほうがまし、という人や、都市部ではブルーカラーよりはホワイトカラーへ、それもスキルアップして高い報酬、地位をめざす人がふえています。
上海で調査・コンサルタント会社を経営する知人によれば、英語ができる中国人は 3人に 1人しか就職ができず、逆に日本語ができれば 1人に3 社から求人があるというので、日本語を学習する人がふえているそうです。日本の簿記学校が中国にスクールを作るという話も小耳にはさみましたので、日本語で簿記もできる中国人がどんどんふえていくことになります。
9月にベトナムへ出張しましたが、ベトナムは日本語話者数世界一(もちろん日本を除きますが)をめざしているだけあって、外交官、政府機関の方はもとより、企業関係者の日本語の話せる人の多さは信じられないほどです。アジア諸国で日本語の話せる人がふえている間に日本ではどのくらい英語やその他のアジアの言語が話せるようになったのか考えるといつも恥ずかしさでいっぱいになります。
私の会社には、アジアの国ぐにから、技術者を始めとする専門家を紹介してほしいという案件が各国の政府機関や企業からまいこみますが、先方の希望する技能や経験にぴったりな人材が見つかってもたいていは「英語ができない」という点で推薦できなくなってしまいます。数年前なら中国で日本人専門家を迎えるにあたり日本語通訳をつけてくれたりしましたが、今は「英語環境になっていますので英語でいいですよ。」と先方から言われ、困るというか嫌味にさえ聞こえることもしばしばです。特に中国の大企業は国際ビジネスが急速に成長しており、また国際基準というのは西欧が一歩先んじているため、英語でビジネスができる体制をしっかり作りつつあります。
一方、先日日本のある政府機関から日本の中小企業の社員教育に何が必要か、特に国際化に対応するにはどうしたら良いか、というような質問を受けましたが、質問自体が時代遅れのような気がしました。私の見聞きする限り、日本の中小企業は業績が二極分化しており、勝ち組においても不要な社員は切り捨て、有能な社員に取り替える時代です。会社が社員を教育していては間にあいません。また、国際化にはまず専門分野の仕事が英語でできることです。何ケ国語も話せるのに仕事がなくてぼやいていた女性がいましたが、理由は簡単で彼女の場合は専門分野も実務経験もなかったからです。日本もそういう時代に入っています。有名校を卒業し有名企業に入れば一生安泰な時代は去りました。個々人が自分の才能をどのように生かし、伸ばしていくかを考え努力し続けなければならないという事は大変でもありますが、職業観や幸福感という点では多様性への理解が生まれるのではないかと期待しています。
河口容子
【関連記事】
[297]国際化できない悲しい日本
[251]外国人と仕事をする
[234]英語が苦手な日本人
[191]書くことと話すことが違う日本人
[154]仕事を支える電脳グッズ
私が自分の会社を創立して 5年と数ケ月経ちます。決めたらすぐ行動しないと気がすまない性格なので会社員を辞めて10日後に株式会社の登記が終わりました。幸い退職金の一部を資本金の1000万円に充当できましたが、それ以上は出資しないし、借り入れもしないと心に決め守っています。最近出た本によれば、起業で成功するのは1500人にひとり、 5年以上続くのは5%ということですので、一応5%組に入れた事になります。
2003年の 2月 7日号「ITのチカラ」でも書いたように私のビジネスを支えてくれているのはITの進化のおかげです。1976年の総合商社に入社した頃はパソコンはおろか、ファックスすら世に出現しておらず、コピー機もフロアに 1台か 2台でいつもその前に社員が並んでいたことを思い出します。当時、海外とのやり取りはテレックス(電信)や電話で行なわれ、世界中に張り巡らしたネットワーク(人と通信網)を新入社員や賓客に紹介するのが定番メニューでした。人と通信網から見ても総合商社とは資本投下型ビジネスなわけです。
この部分を究極に節減できれば、驚くほどリーズナブルなコストで総合商社の持っているコーディネート機能や開発機能を伴う貿易実務を提供できるのではないかと考えたのが私の起業の発想の原点でもあります。想像外であったのはクライアントに日本企業はあまり増えず、政府機関や外国企業ばかりになっており、逆にそれが強みにもなってしまったことです。
この 5年で私のオフィスも電脳化が充実してきました。クライアントのニーズと経費節減の努力による進化と言っても過言ではないでしょう。当初は電話回線も 2本で、 1本はインターネット接続にあてていました。ところが、比較的大きなデータをやり取りせねばならないクライアントの出現でインターネットをブロードバンドに切り替え、空いた電話回線を FAX専用にまわすことができるようになりました。
会計ソフトは起業と同時に導入しました。もともと伝票業務が少ないという意味でコンサルタントというフィー・ビジネスの形態を考えましたが、この会計ソフトのおかげで決算業務も年に 4回ある消費税の申告も自分ひとりでらくらくこなせます。請求書や納品書のフォーマットも無料でダウンロードできるものが今はたくさんあります。
講演の仕事が出てきてからはパワーポイントは必須アイテムですが、これも最近はおしゃれなテンプレートが無料でダウンロードできたりします。
商品や展示会の写真を撮る必要性が出てやっとデジカメを買いましたが性能も良く価格がこなれて来た頃だったのでラッキーでした。何十枚とメールに添付するのはメールを何回も分けなれればなりませんので、そういう場合はフリーメールのフォトサービスにアップロードし、ウェブ上から見てもらう事にしています。これを使うと閲覧者や閲覧期間を制限することもできますので機密保持上も問題がありません。
最近の携帯電話はカメラ機能がついていますので、デジカメを忘れたときはもちろんのこと 2-3枚しか写真を撮る必要のない時には便利です。この携帯電話も外出先で仕事をするのに大活躍で名刺に番号を刷り込んでいますが、業務用にしか使いませんのでオフにはスィッチを消してしまいます。
スキャナーも活躍しています。カタログの薄いものなどはスキャンしてメールに添付して海外に送ります。郵送費の節約とビジネスのスピードアップにつながります。また、相手が何人でも一度で送れるというメリットがあります。このスキャナーもインクジェット方式のプリンターとコピー機を 1台でこなせる家庭用のものですが、コピーを一度にたくさん取ることがない私の業態では十分なパフォーマンスです。
最近買ったのは私物ですが、 MP3メモリーレコーダー。出張など長い移動期間中の気分転換に軽くてかさばらず、いざとなれば録音機にもFMラジオにもなりますので、これまた電脳グッズのひとつです。
PDAも買ってみましたが、手帳派(時系列的に何年も記録を残し、大量にメモを取ります。)のためこれはあまり使いみちがありません。
こういった機器は必要になったら、目的に一番適した機種をできるだけ安く買うのが方針です。ただし、バックアップ用のパソコンを持ち、バックアップ用のプロバイダーの契約をするくらいの慎重さは持っています。パソコンというのはいつ何時故障するかわかりませんし、プロバイダーのサーバーダウンという事もあり得ます。小企業はこんなささいなアクシデントで信用や仕事そのものを失う可能性があるからです。
河口容子
【関連記事】
[019]ITのチカラ