取引先の役員で毎年フィリピンにゴルフに行くのを楽しみにしておられる方がありました。時には奥様も同行されます。もちろん料金が安く、キャディさんがギャラリーのごとくいっぱいで、日傘をさしかけてくれる人、冷たい水の入った水差しをお盆に持ってついて来る人、汗をぬぐってくれる人と至れり尽くせりのサービスのようです。「日本ではこんな贅沢はもうできないのだから、途上国は気分がいい。」という発言に、世界各地の途上国でいくつも工場を立ち上げ、現場で指揮をしてきた経験の持ち主にしてこんな発想なのかとかなりがっかりしました。それを悟られ「少しのお金で豪遊できてどこが悪いのか、彼らだってお金がもらえなかったらもっと貧乏になるのだ」とまで言われました。確かにおっしゃるのは事実で、それがひどく悲しかったのを今でも忘れません。
日本人の多くは途上国に行くと、つい日本の物価と比較して「タダみたいに安い」と欣喜雀躍、ついついお金をばらまきます。しかし、冷静に考えると現地の人からみればとんでもなく高いものだったりします。インドネシアや中国の高級レストランで 3-4人で食事をすれば日本よりははるかに安くても、現地の工場労働者の 1ヶ月分の給料の金額だったりします。五つ星のホテルにしても東京のホテル代と部屋の狭さから考えると嘘みたいですが、現地に暮らす普通の人はそんな所に泊まるなんて想像もしたことがないでしょう。日本人からみればつかの間とはいえ、極楽ですが、経済格差というマジックの上に乗っかっただけの話で何も自分が偉いわけではありません。日本ではごくごく普通、途上国に来たとたんいきなり大金持ちと錯覚して横暴に振舞う日本人たちの姿は現地の人にはどのように写っているのでしょうか。