私の会社では香港のビジネス・パートナーと一緒に日本製の消費財を香港・中国本土市場で小売や卸売をするという事業を 3年半近くやっています。もっとも日本製といっても最近は中国で製造されているものが多く、当初は「メイド・イン・ジャパン」にこだわっていたのを最近はジャパン・ブランド、ジャパン・クォリティ」の中国製を対象とするという方針に切り替えつつあります。日本ブランドを製造している中国工場から直接出荷してもらえば、時間もコストも節約できるからです。また、日本の企業にとっても輸入をする場合は発注ロットが大きく、単価は安くても、どうしても一部在庫として残ってしまわざるを得ない、その部分を最初から中国で引き取ってもらえれば、リスクの軽減にもつながります。
ところが、この提案を取引先にさせていただくと、一致して「総論賛成」、実は「実施不可能」という結果が大変多いのです。理由は、特に中小企業の場合、中国生産といっても自社工場を持っているわけではなく、間に商社などの中間業種が入っているケースがほとんどだからです。工場がどのように運営され、出荷されているのかわからないのです。中には貿易手続きはもちろんのこと、為替リスクや不良品などはすべて中間業種持ち、つまり輸入製品を扱っているとはいえ、輸入に関する知識も一切ない、という企業がたくさんあります。はなはだしきは、この中間業種のご機嫌を損ねると年に一度の工場見学すら連れて行ってもらえないという話も聞きました。
香港のビジネス・パートナーに言わせれば、こうした中国の契約工場は最低2?3%過剰生産を行ない、中国市場に横流しをして利益を得るのが「常識」だそうです。こうした横流し品あるいは模倣品が、正規品を扱っている香港パートナーのところにまで堂々と売り込まれてくるのが中国の特徴です。「こちらのほうが安いからもっと儲かるのになぜ買わないのか。」といった按配です。あるときは類似品を出しているのは、正規品の欧米向け輸出総代理店となっている日本の総合商社の中国法人だったこともあり、日本人も中国市場をどさくさに紛れて悪利用していることがわかります。中には契約工場がわがもののごとく日本の商標登録をしてしまうケースもあります。
日本企業としては、コストダウンのために中国製造をきめ、日本市場しか見て来なかったためにまわってきたツケとしか言い様がなく、そろそろ中国市場に進出をと考えたころには、模倣品が氾濫している、商標登録まで他社が持っている、という事態に直面します。低価格の類似品が中国から還流してきて国内市場も失い倒産した企業もあります。
元の更なる切り上げはあり得る事ですし、中国の人件費も昔ほど安くはありません、「低コスト」だけを手放しで喜べません。また、日本市場も景気復活の兆しが報道されるものの、二極分化により市場構造が変わりつつあります。新たな市場として魅力が出てきた中国を開拓すること、知的所有権を守ることなど攻守のバランス、複眼的思考がこれからの日本企業には必要だと思います。
河口容子
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香港のビジネスパートナーが久しぶりに東京にやって来ました。だいたいせっかちで一方的な性格のため、あっという間にスケジュールを決め、取引先とこんな事を話したい、あんな事をしたいというメールが来ます。だいたい到着の 2-3日前の話です。毎日3件くらいのアポを入れ、取引先に商品サンプルなどを用意していただかねばなりません。皆さんご多忙にもかかわらず、快くスケジュールを調整して下さり、駅までの送迎をかってでて下さったりと本当にありがたい限りです。ただでさえ、てんてこ舞いの私に台風が上陸するかも知れないとのニュースが飛び込んで来て、まさに「嵐を呼ぶ男」です。
逆に来日するほうの身にとれば、充実した日々を過ごしたいと思うので「めざせ、アテンドの達人」としては連絡先一覧をかねた詳細なスケジュール表を作成して本人や留守番部隊にメールで送っておきます。到着が夜のためその日は会わずホテルのフロントに私がいつも預かっている日本国内用の携帯電話をお土産と一緒に届けておきました。日本語の携帯のため簡単英語マニュアルも作成しました。
今回は高崎と前橋に本社がある取引先も訪問しました。ちょっとした遠足気分です。仕事のアイデア交換や政治、経済の話などを移動中はよくしています。選挙の話も出て、「自民党が過半数を取ればふたたび小泉首相となるのだろうがその際は中国政府に徹底的に叩かれるだろう。日中双方ビジネスをしている人間は被害をこうむる。」と言っていましたが、そこまで来れば日本のビジネスマンも黙ってはいない気がします。もはや中国とのビジネスは大企業のみならず個人事業者のレベルまで実に裾野が広いからです。
前橋で夕食を取りながら「香港のビジネスマンは日本人に比べアクティブでフレキシブルな理由は何だと思いますか」とたずねてみました。「まず起業が簡単な環境にあるからだよ。日本では会社員が起業するのは非常に難しい。リスクが大きいし、リスクを非常に恐れる。香港人はイチかバチかで賭けるのが好きだよ。」彼は10社ほど会社を持っていますが、社員が転職したり起業する前によく相談に来るそうです。そのせいか、転職したり起業した後もいろいろビジネスの情報をくれたりするとか。それに比べ、日本では密かに就職活動を行い、転職先が決まってから初めて退職したいと上司に言うケースが多いのではないでしょうか。会社というムラ社会がいまだに存在します。「日本人はまず自己責任の概念を学ぶべきでしょう。サラリーマン根性と日本では言うのですがすぐ言い訳をし、会社や上司のせいにしがちです。」と私。「特に日本人の男性の中間管理職は最低。その下で働く女性のほうが実務ができるからはるかに使える。」と彼。
埼玉の戸田にも一緒に出かけました。「オリンピック通り」の名前から東京オンピックの話になり、映画「東京オリンピック」を観たかと聞くと「非常に印象に残る映画」との答えでした。彼とは映画、音楽、本が共通の趣味ですが、「観たければ今度、DVDを貸してあげるよ。」私が東京オリンピックの頃日本はまず貧しく、高速道路も新幹線も世銀の借款で作った話をすると「何もかも破壊されて短期間に復興したのは驚異的だった。きっと米国がたくさん資金をつぎこんだのだろう。」
戸田から新宿へ帰る電車の中、私たちの向かい側のシートにフィリピン人が 3人並んで腰掛けていました。英語で話している私たちを不思議そうにじろじろ見ています。おそらく何人だろう?と思ったのか、どちらが外国人かなと思って見ているのでしょう。たぶん、いつものように彼が日本人で私がどこかのアジア人と思われているに違いないと内心おかしくてたまりませんでした。
台風一過、夏の日差しが戻り、彼も予定どおり香港へ戻って行きました。10月 1日からの国慶節の中国版ゴールデンウィークは中国、香港の小売業やレストラン、観光業にとって繁忙期です。その前に仕入、船積みともうひと嵐が私にはやって来ます。
河口容子
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