[057]追悼:ブルゴーニュの星

朝起きたら「ロワゾー氏亡くなる」というニュースが飛びこんできた。
水の技法という料理を産み出してブルゴーニュの代表的な食材である蛙を使った料理で三つ星を掴んだコート・ドール県の星、ベルナール・ロワゾー氏に初めて会ったのは2000年1月でした。その調理法が日本人にとても人気がありファンも多いのでと某旅行会社の依頼で弊社のクルーズとロワゾーさんの料理、食材をテーマとしたツアーの企画が持ちあがりそのお願いに上がった時でした。
弊社の創立者がロワゾーさんのファンで30年近くも彼のレストランに通い故人とも親しいというのでその叔父様に連れられ初の三ツ星体験。打ち合わせはディレクターである夫人とその秘書の女性と私達4人のみ。食事のあと廊下で創立者の叔父様がガタイのがっしりしたまるで肉屋の店主みたいなオジサンと立ち話を始めた。ロワゾーさんご本人を一度も見た事もなく仏語もおぼつかなかったのでその人はお肉担当の人だろうとぐらいに思ってました。


会話が一息ついたところで「とみこ、ロワゾーさんを紹介するね」と言われこの肉屋のオヤジがあのロワゾーさん?と背中が仰け反るくらいに驚きました。ロワゾーさんは機関銃のような早口で私が担当するこの企画は面白そうだし、日本人は大好きだから頑張ろうと言われました。私も帰社するなりパリの日本書籍店経由でロワゾーさんの自伝を書いた「星を掴んだ男」を購入し彼について猛勉強。
著書の中で紹介されるロワゾーさんはその後数回会った彼と全く同じでいつも何かに挑戦している躍動的な人でした。震災で失った神戸のレストランを再興したいと言い、ブルゴーニュの良さをもっと世界の人に知ってもらいたいと熱く語ってくれた人でした。残念ながら私達の企画は9.11のテロ事件により流れてしまい、何とか近い将来それを実現したいと思っていたのに。
ロワゾーさんのブティークで買い物をしていたら小さな愛くるしい女の子がお店番をしてました。夫人にそっくりなのできっとお嬢さんだなと思い声をかけたらやっぱり。春休みだったので彼女は店番をしているという事でした。店内に溢れるように並ぶ蛙グッズに「どうして蛙グッズが多いの?」と聞いたら自信たっぷりに「パパがね蛙のお料理で3つ星を取ったからよ」と返ってきました。
仕事熱心でキッチンから離れたことがないとまで言われた偉大なるブルゴーニュの星、ロワゾー氏に追悼の念を込めて。
夢路とみこ