仕事で船内コーディネーターとして乗ると添乗員さんから「とみこさんが乗船してくれると通訳してくれるから助かります。僕は仏語どころか英語すらも殆どだめなんで」と言ってもらえたりもする。海外で就職となると現地言語は当然のことながらビジネス言語の英語は必須。外国語に不慣れな人が聞くと私程度でもベラベラに聞こえるらしい。いやお客様の手前、そう装っている。しかし本当はかなり苦しい。日本人が外国語の発音で苦手とされるのが「LとR」私もその例に漏れることなく苦手。この二つの文字が入ると聞くのも喋るのも混乱。そして喜劇の主人公になることもしばしば。
週末をアルルで過ごすためエイグ・モルト下船の後にニーム乗換えで電車に乗った。車内連絡で「次はArles、アルル」と聞こえたので下車。駅を出たら世界的な観光地の割には随分と干からびている駅と思った。荷物が重くとにかくタクシー乗り場へ。「サン・トロフィーム教会傍まで」と運転手に告げると向こうは?顔。発音悪いから通じてないと思いアルルの地図を見せたら「マダム。これはアルルですよ」と言われた。アルルにいるつもりの私は「だからここに行って」とせっつく。コイツは馬鹿か?という様子で運転手は更に「ここはアレス、AlesでArlesではありません。アルルへ行きたいなら電車に乗りな」と言われ自分のミスにやっと気付いて再び電車の3時間待ち。
この喜劇、実は数年前にも一度あり。みちのくワイナリー一人旅でシャンパーニュ地方へ向かったとき。Reimsと書いて何故かしらランスを発音する。駅の窓口で「ランス行き1枚」と切符を買いいそいそと電車に乗る。パリから1時間半足らずで着くはずなのに2時間以上乗っているのにまだ着かない。おかしいと思い車掌さんに尋ねる。「ランスはいつ頃着きますか?」「もうすぐですよ、切符を拝見」と切符を見た車掌さんの目が点。「マドモワゼル(その時はそう呼んでもらえた)ランスへ行くんですか?この電車はレンスに行くんですよ。」「ぬぁにー、レンスだとぉ。ランスでないのぉ」そうこの電車はReimsランスならずLensレンス行きだった。そしてその時もひなびたカフェで2時間待ちのコーヒーでした。
あれから数年後の今でさえLとRの発音で苦労するとは私の語学力に進歩がないのか。いやはやそれだけ外国語は難しいという事にしておきましょう。やっぱり語学力に自信のない私はペンとメモが手放せません。「通じぬなら、書いて通れ、言葉の壁」字余りご免候。
夢路とみこ