[097]アメリカンダイナーの味

毎日自炊だし、中華料理は地元料理よりも安いし中華食材なら和食の代用品なんて簡単に集まるのでそれ程和食が恋しいという事はありません。むしろ私にとって時々たまらなく食べたくなるのがアメリカンダイナー料理、つまりアメリカ映画によく描かれるハンバーガーやシロップたっぷりのパンケーキに茶色いお湯のようなコーヒー。映画レインマンやプリティウーマンに出ていたダイナー。フランスのマクドナルドなんて朝食にパンケーキはないし、エッグマフィンもトイレットペーパー位に薄いハムしか入っていない。あんなの嘘だ。
育ち盛りの時期の数年間をアメリカで過ごした私にとってハンバーガーとフライドポテトにチェリーコークは青春時代の味。厳格なミッション系の学校で食事は菜食料理しか出なかったあの頃、悪ガキ仲間と夜な夜なダイナーへ行きハンバーガーをむさぼりタバコをふかした懐かしい時代の味。この頃覚えた煙草とお酒。ヘビースモーカーの時代は去り酒豪だけが残る。

ディジョンは大学都市だからもちろん米国からの留学生も多いのだがやはりフレンチガストロノミーの中心地、本格的なアメリカンダイナーの店はなく、あるのはディズニーランドのウエスタン広場みたいななんちゃってアメリカンダイナーのみ。無性にハンバーガーが恋しいときだけ行くけれど心底満足するのはパリにあるダイナー、「ブレックファースト・イン・アメリカ」だけ。
店内は赤い革張りのボックス席に安っぽいテーブルが並び、タイル床とカウンター席がものすごく古き良き時代のアメリカ。キッチンには注文表を洗濯物を干すようにぶら下げる回転式クリップがあり出来上がるとチンと呼び鈴がなる。まるっきりここだけアメリカン。店内BGMはアメリカンロックかフォーク。お客の会話もアメリカ訛りの強い英語、ここだけリトルアメリカ。それはニューヨークやロスのようなシックな都会のイメージではなく私が住んでいたテキサスやお隣のオクラホマのような普通のいささか田舎臭い雰囲気をかもし出す。
ハンバーガーを食べるだけならばマクドナルドやステーキハウスがあるけれど、具となるハンバーガーの焼き具合を尋ねてくれたりバンズのパンをトーストしてくれるサービスはこれらの店にはない。それがあってこそ本当のアメリカンバーガーである、とハンバーガー狂の私はもの申す。フランス料理に飽きたらアメリカンはどう?
ブレックファーストインアメリカのサイト:
http://www.breakfast-in-america.com

夢路とみこ