[110]たかが邦人、されど邦人

海外留学先を探すときに「日本人が少ないところ」と希望するのはよくあること。到着してからも早く現地の生活と言語に慣れるためにも邦人との接触を避けるようにするのも珍しくないこと。でもそれで本当に有意義な留学生活が送れるでしょうか?留学先で逢う日本人には日本では逢う機会もないような面白い人や変な人がいて多種多様。それが留学生活を潤し、刺激し、思いで深いものにしてゆくのではないでしょうか。
米国留学の先をテキサスにしたのはウエスタンが好きでカウボーイに憧れただけでなく「日本人が少ない学校」という理由でした。でも到着したら「少ない」ではなく「全くいない」キャンパスだった。厳格なミッション系の学校、日本語を話す機会がないため私の神経は2年でダウン。とうとう夜中に夢遊病で校舎を徘徊する程に。

夏休みということもあり急遽帰国。空港に迎えに来た母は憔悴しきった私を見て「カツ丼食べようか」と。毎晩夢にまで見た懐かしい「カツ丼」を泣きながら食べる私。母は「退学して帰国したいなら、してもいいよ」と言った。入学してすぐの頃掛けたホームシックの電話には「あんたが勝手に家出してまで行ったんだから卒業するまで帰ってくるな!」と叱咤した人だが。「一杯のカツ丼」から元気が沸き、帰国後1週間でまた両親と大喧嘩。家を飛び出し南房総の民宿で住み込みのバイトをして秋には再びテキサスへ。それから1年後、やっと日本人後輩が入学して来た。
その後の海外生活ではいつも周囲に日本人がいます。そして積極的に交わるようにしています。海外で会う邦人はいつも気の合う相手ではないけれど、日本なら縁がなさそうな人との出会いがとても楽しいのです。期間が限定している留学中に一生懸命現地の習慣や言語の習得に励むのは当然ですが、日本ではありそうもないユニークな出会いをエンジョイしてみては如何でしょう。
こちらに来てすぐに知り合った日本人は料理やワイン関係の人たち。彼らが帰国するまでの間、私に多くの知識と経験を与えてくれました。それは今、私の仕事に生かされています。仮に私が仏語習得に焦り付き合う相手をフランス人に限定していたら今日はなかったでしょう。
ディジョンには日仏文化協会があり快適な留学生活の支援をしています。この町への留学を検討中ならば出国前、到着後、色々な相談窓口として知っておくと安心して有意義な留学生活が送れますよ。
ディジョン日仏文化協会: http://afjd.free.fr

夢路とみこ