[123]解雇劇、合言葉はサラ

今年初めの添乗を終えた。この後もシーズン上がりの10月までたくさん添乗予定があり忙しくなるから有給休暇を早めに消化するように言われてたので下船後そのまま帰社せずにのんびりとブルターニュ旅行なんぞを楽しんだ。木曜日にディジョンに戻り、金曜日の朝出勤したら社内の雰囲気がおかしい。午前9時始業開始時間、社長が皆に重要な発表があるから集まれと言う。
「会社を売った。皆と一緒に後2年で迎えるはずの40周年を祝えないのが残念だ。弊社は今日から米系の会社になります。じゃあ皆、元気で」と挨拶。その後すぐ社長はかばんを取って消えた。この間僅か15分。1時間後に来た米国人の経営陣たちは挨拶がてらリストラを勧告。米系になった以上、会社は戦場、彼らは捕虜を取らない上に生き残るためには手段を問わない。
新社長は新しい経営方針を語りながらSARA(サラ)という言葉を残した。SはShock(打撃)、AはAngry(激怒)、Rは Resistance(拒否)、AはAcceptance(容認)この4ステップを経なければ新しいチームワークは生まれないと。


上記のM&A定義もそうですが、私がいやー米系企業だな、と感じたのは翌週Xデーとなった日にわざわざ米国本社から派遣されて来たリストラ勧告のプロとご対面したとき。新社長から通告すれば良いのに、面識がない以上何の感情もなく出来るはずなのに。金曜日に社長退陣、火曜日に解雇通知を受け、金曜日に解雇手続きの説明を受けた。目まぐるしい1週間だった。派遣されたプロによればマーケティングは本社で、日本市場の開発はもう止めたからと解雇理由を聞かされても納得行かず。日本人乗船客ゼロのところを4年かけて年間数百名まで伸ばした私の苦労は何だったのか、失業してこの外国でどう生活しろというのか。説明は耳の中をトンネル状態で抜け出て行くばかり。
一通りの説明を受け、今日からもう自由だし給料は1か月分出るからとの言葉で自分を取り戻しオフィスに戻った。新経営陣の女性が無神経さモロ出しの笑顔で、「皆で一緒に食べようと思って中華料理の出前を注文したのよ。とみこも一緒に食べなさいよ。日本人だから中華好きでしょ。」私が数分前までリストラ勧告を受けていたことを知っているくせに。私も怒りを露にして「日本人だから家に帰って美味しい和食を食べます。」とにらんだ。
帰っても和食を作るほど元気もなく、共にリストラされた仏人同僚からの電話でビストロに行き美味しいフランス料理とワインを堪能した。
夢路とみこ