海外出版の日本ガイド本に紹介されている日本の料理は「すき焼き」「しゃぶしゃぶ」「江戸前寿司」とどの本も似たり寄ったり。これじゃあ「フジヤマ」「ゲイシャ」の時代から何の進歩もないような。日本出版のフランスのガイド本だって今では「クロック・ムッシュ」や「ウフ・アン・ムーレット」のような庶民が普段食べる、そして店でも一人前で注文できるものを紹介しているのにね。
私ならこう来る。まずは「立ち食い蕎麦」これには高度成長時代の日本の社会の昼食を「早く、安く、健康的」に支えた貴重な一品だから。そして居酒屋、特に紹介したいのは西新宿の「思い出横丁」ここは敗戦直後の闇市場がこの界隈に建ち並び、市場で売買した後の人たちの軽食を取る場所として戦後すぐに出来た場所。数年前の火事で一部が焼け再興されたけれど、私の行きつけの店「一富士」は昔ながらの佇まいをそのままに残す。ここには古き良き時代、西新宿の「ベルエポック」がそこにある。
女性の姿を立ち食い蕎麦屋や居酒屋に見るのが珍しくなくなったのはいつからだろうか。私が東京に住んでいた頃はまだまだここは男性の聖域で、押しのけるようにのれんを潜ったものですが。今は蕎麦の湯気に鼻をくすぐられ人前も憚らず大きな音で鼻を噛む女性が隣の席にいる事も珍しくない。やはり私達女性は社会進出と共に強くなったのだろうか。そんな話題を語りながら日本の経済の根底を支えた庶民の食文化をもっと外国人観光客に紹介したいものですね。
私の多趣味の中の一つに「写真」があります。19年前に購入したミノルタのX300という今ではもう骨董品のようなカメラで4年に一度の周期で修理に修理を繰り返していますが、私と一緒にいろいろな所を旅してきました。ここ数年はフランスの各地を行き、撮った写真はいつも船の中でお客様に披露。フランスの景色を撮ったアルバムも既に数冊が溜まり船ではもう見せ切ったものもあるので、今度は日本でこれを披露したいと思い「一富士」に預けてきました。私個人の移動写真展です。このメルマガで紹介した数々のフランスの田舎が撮影されています。もちろん私の大好きな運河や船の写真もあり。西新宿に寄る機会があったら是非この居酒屋で一杯やりながら「ブルゴーニュ通信局」を目で見てください。ガイドブックには収まりきれないフランスの田舎、フランスの今日をご紹介しています。
「一富士」が掲載されている新宿西口商店街のサイト
http://www.shinjuku-omoide.com/
夢路とみこ