[109]フランス映画はお好き?

私の精神的健康面を支える幾つかの要素に「映画」があります。即ち私は大の映画ファン。私は週に少なくとも2本は映画を観ます。こちらは1本7ユーロだしマチネなら3ユーロで観れるところもあります。日本と違ってハリウッド映画が同時公開というのはこの田舎町では殆どなく、またそれらの大半が仏語吹き替え版。一部の映画館では字幕スーパーでの上演で私は専らこっち派です。語学学習に映画は不可欠。言葉のみならず文化や慣習も一緒に学べます。また映画なら難しい文学やややこしい歴史物語を簡単にわかり易く噛み砕いています。
ハリウッドや日本では昔の情景を出すのにスタジオ内にセットを作りますが、フランスの場合、撮影場所は国内のどこかで十分。それくらいに中世の町並みや戦前の町並みが残されています。では、フランス映画を通して次の旅行プランも立ててみましょうか。

横浜で毎年フランス映画際があるのに日本ではフランス映画が米国映画並に頻繁に、且つ多くの作品が一般公開されないのは残念。ヌーヴェルヴァーグの時代から考えると最近は撮影にCGを駆使したり、軽いラブコメディなどちょっと作風が米国影響を受けている気もしますが、それでもフランス映画は元気です。フランスらしさはその巧みな台詞回し、男女の恋愛の機微や駆け引き、同性の友愛、家族愛の中にフランス映画の面白さがあると思います。それはスカッと爽快なアクションやぽぉ~と頬を赤らめるようなロマンティックな「動」でなく、心理描写などが中心の「静」のもの、やはり大人の社会フランスを印象つけます。
ディジョンには「エルドラド」という「名画座」があります。日本映画も含め多くの外国映画をフランス映画と同じくらいの数で上映します。ここでは議論好きのフランス人らしく「討論会付き上映会」があります。先日も行きましたがその時は最近公開さされた仏映画でフランドル芸術の大家「レンブラント」の映画を見た後に学芸員がフランドル芸術そしてレンブラントについて解説。ただ映画を観るのではなくその時代背景を解説してもらうことで更に映画の深みが味わえました。
私が毎週観るフランス映画には秀作も佳作も駄作もあります。どれをとってもフランスらしさがあってますますフランスが好きになります。フランス映画ファンの皆様、こちらのサイトをご覧あそばせ。私はいつも仕事中にちらりちらりとこれを読んで週末の映画スケジュールを決めます。
エルドのサイト http://www.cinema-eldorado.com/

夢路とみこ

[103]オヤジカフェに文化あり

フランスはカフェ文化と言われるほどにカフェが多くそれはフランスの知的文化の源であり大衆文化の泉のような気もします。パリや南仏ではカフェそのものが外観となり美しい光景をかもし出します。私も都会のカフェでインテリぶってカフェノワゼット(エスプレッソのクリーム入り)をシックに飲むのが好きですが、それは表参道や南青山でも出来ること。フランスでカフェ文化の大衆臭さを満喫するならやっぱり地方のオヤジカフェに行くことを薦めたい。満喫は遠慮でもやっぱり一見の価値はあるので是非旅行中に一回は立ち寄ってみてください。

パリや南仏のお洒落なカフェと一線を画しオヤジカフェは東京の有楽町ガード下、私の魂の癒し何処、新宿西口思い出横丁にも通ずるものがあります。そこにはハンチング帽のようなベレー帽を被ったオヤジが鼻の頭を真っ赤にしてワインやビールをすすっています。あっぱれ仏大衆文化を守るオヤジ、朝からでもワイン!ダイエット大流行で最近の若者は私たちがイメージする程にワインを飲みません。またワインに対する知識も思い入れも外国人の方がすごいような印象すらあります。外国人に乗っ取られそうなワイン文化をオヤジカフェのオヤジ達はひたすら守るかのようにワインを飲む。きっとオヤジは哺乳瓶の頃からワインの味を知っているのでしょう。
オヤジカフェでは入り口付近のカウンターに屯してくだを巻いているから入り難い雰囲気がありますが、朝や日中なら勇気を振起して是非入ってみて下さい。朝は近所のパン屋からの焼きたてのクロワッサンやパン・オウ・ショコラがあるのでカフェ・クレーム(カフェ・オレの事)と一緒にどうぞ。ホテルの朝食よりも安い。出勤前のオヤジがコーヒーを引っ掛けていたり、定年か失業かの常連オヤジは地元紙を読みながらワインを片手によもや話をする。ランチタイムなら近くのOLが安くて美味しい定食を食べに来たりもする。フランス語が分からなくてもオヤジ達の「この世の春」的な明るく手振りが大げさなおしゃべりは聞いていて楽しいもの。またオヤジカフェは常連で成り立っているようなものだから郷土名物ドリンク、ディジョンならキール、南仏ならパスティス、ノルマンディーならカルヴァドスが安くて美味しいこと。日本でもそう、常連の多い居酒屋こそ銘酒と珍味に出会える場所。B級でもC級でもない独立したオヤジグルメ。私はここにフランス大衆文化の底力を観ます。

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