[210]とんでもハップン(1)

先日のパリ地下鉄閉じ込められ事件に継いでまたまたとんでもないハプニング、私的には「とんでもハップン」が起きた。舞台はチューリッヒ空港。厄年でもないのになぜ???
突然の出張決定だった上に目的地のバルセロナではパリに継いでの見本市にあたってしまったので飛行機もホテルもほぼ完売。頼るのはネットでのラストミニットのチケット購入。いろいろと見比べて一番安いフライトが調達出来た。ここまでは良し。しかし、パリを早朝に出るのにチューリッヒからバルセロナへの乗り換え便は夕方までない。
待つこと7時間、やっと乗れると思い搭乗ゲートに向かうと、朝から降り続ける雪のために出発が更に1時間半ほど遅れるという。実際はその30分後に搭乗する予定の便はもとより、夕方以降の便の大半がキャンセルとなる。大変なのはそれから。何十本の便が同時欠航だから予約カウンターに人の大波が押し寄せる。
次の可能な便に乗せてもらうにはカウンターで最予約をしなければならない。人で作る大むかでの尾っぽに私も並び、最初は周囲の人たちとにこやかにぺちゃくってましたが、3時間を過ぎた頃から足がしびれだし、みんなも顔に笑みが消えてきた。ちょっとでも気を許すとすぐに割り込んで来るし、その上カウンターの対応が驚異的に「のろい」ちんたら、ちんたら乗客の振り替え作業をしている。だから一人に対して15分?20分も掛けて気が遠くなる。
欠航の案内が出てすぐに並んだのは午後6時、実際に私が振替便の切符を手にしたのは午前2時、その間8時間。自分でも今更ながらに火事場の馬鹿力を怖いと思ったのは、この8時間の間、水やトイレにと列を離れることなく、ただじっと立って待っていたこと。切符を手にした頃は意識ももうろうとしていました。前日徹夜で仕事をして、チューリッヒに着いてからも空港内の電源が取れるところでこの通信局を書いていたりしたものですから。教訓、フライトの前は十分な睡眠を取ろう。
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夢路とみこ

[209]スイスにて(2)

フランスとスイスの地理的関係を表す時に取り上げられるのはまず、アルプス。それはアルプス山脈がこの二つの国を跨っている事にあるのでしょう。名称もフレンチ側、スイス側と言うくらいだから。それにフランスのドイツ占領下時代にはフレンチアルプスを越境してジュネーブに逃げた人たちも多く、私の留学していたフランスの大学の先輩のひとりにも武勇伝の主人公になった人がいて、Hiding Placeという小説と映画になってヒットしたくらいですから。
しかしスイスと国境を隔てているのは、ドイツ軍による迫害の末越境をした場所はアルプス地方だけではありません。フランシュ・コンテ地方だってそう。余り知られていない事実ですが、スイスの時計産業、とりわけ鳩時計、と上質のパイプはフランシュ・コンテを追われた技術者がスイスに渡り伝授したフランスの技術。
占領下のフランスでは若い技術者男性はみな徴兵に駆り出されてしまい、時計産業もパイプ製造産業も凍結。これらの産業で知られるフランシュ・コンテ地方はサン・クロード村の若い技術者が多く新天地を求め隣国であり永世中立国スイスへと逃れたため、技術はスイスに受け継がれそこで本国以上に開花した。スイスアルプスからの美しく冷たい水が、上質の水をふんだんに使用する時計産業には当りで、スイスはあらゆる面で好条件の「選ばれた地」だったのです。
スイスの有名なハードタイプチーズ、グリエールはもともとこのフランシュ・コンテ地方が発祥の地。グリエールはスイスのコンテと呼ばれていた時代もあったようで。文化的、技術的貢献度からするとこの地方の功績はアルプス地方にも引けをとらないはず。アルプスは高級リゾート、一般庶民のご近所リゾートはフランシュ・コンテだけれども。コンテチーズとグリエールチーズを並べて味わえば、どっちがどっちと思うこともしばしば。ただし、コンテの方が長期熟成をする事が多いので、熟成したコンテと若いグリエールだったら味に差も出てきますが。
そしてこの辺りの冬の名物、チーズ・フォンデューなるもの。スイスとアルプスとフランシュ・コンテ、それぞれが「発祥地」を主張しグリエール、ボーフォール、コンテと核となるチーズにも己と譲らない。私自身、どのチーズでフォンデューを食べてもどれも美味しい。ただ、あわせるワインはやはりその地方のご自慢の白ワインと組み合わせを間違えるとやっぱりイマイチかな。
夢路とみこ
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