[198]北ブルゴーの休日(3)

その村、サン・ファルジョーを最初に知ったきっかけは大島順子さん著の「フランス田舎めぐり」というエッセイ本を読んでから。この村にはサン・ファルジョー城があり夏になると城内で野外劇があるという。確かにこの事はテレビでもちらりと見た。どうやら村興し目的でボランティアの村民が7,8月の週末、この野外劇のためににわか劇団を立ち上げ素人俳優が勢ぞろいするらしい。なんだか面白そう。
サン・ファルジョーもこれまた交通の便が悪い場所にある。観光地として活気付けたい気持ちは分かるけど、車なしに北ブルゴーニュを観光するのは一苦労。でも幸いな事にパリ13区メトロ:Place d’Italieからこの村に行くバスがある事を知り、乗ってみる。片道2時間は掛かり、バス代20ユーロもするけれど、電車では行けないような小さな村と北ブルゴーニュらしい麦畑や田園地帯を走るから、やっぱり利用する価値ありかな。
私がここを訪れたのはオフシーズン。村は活気もなく、さっぱりしすぎかな、覇気も、活力の息吹さえも感じさせない。ただ静かに時が流れるだけ。都会の雑踏に疲れて静かにのんびりとしたいのなら来る意味がある。お洒落なカフェはないけれど、平凡な人たちの平凡な時間に自分を置く事で疲れが癒されるような気がする。
城のすぐ後ろにマダム・ダニーの経営する民宿がある。現在独身のマダムはかつて船上生活者だったらしい。ご主人が運転する石油タンカーでフランス各地をクルーズしていたとか、私とは船の話で盛り上がった。彼女の民宿はこの田舎町には似合わない「ロマンチック」で「お忍びカップルの週末旅行」にぴったりな色気と優美さがある。それぞれの客室もコロニアル風、エレガンス風、アジア風とマダムのお洒落な趣味が感じられます。マダムとおしゃべりしながら夕食のテーブルを囲み、テーブルセッティングの美しさを学ぶ。お手製のマットや紙ナプキンをお洒落な柄にするだけでこんなに素敵な演出が出来るものか、と感心。フランス人の間でも人気が高まるシャンブル・ドット宿泊、早く日本からの観光客にもそれを十分に味わってもらいたいものです。
マダム・ダニーの民宿サイト:http://iletaitunefoisjardin.free.fr/
日本語での問い合わせ先:BurgundyChary@aol.com
夢路とみこ
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[197]北ブルゴーの休日(2)

北ブルゴーニュのノワイエ−ル・シュル・スランは『フランスで最も美しい村のひとつ』協会が指定する村の一つ。この村は交通の便が悪く、一番最寄り駅となるオーセールからでもタクシー利用だと30キロ以上ある。しかし観光局サイトを見ると、パリ−ノワイエール間にバスがあるではないか。早速と問い合わせて見たら13区メトロ:Place d’Italieにあるカフェフランスの前から毎日バスが出ているとの事。
この村は確かに「美しい村」であって「観光地として見応え豊富」という村ではありません。村の入り口に、もう使われなくなって久しいだろう公共洗濯場が昔の賑やかさを思わせる。村はかつて城壁内にあったらしく入り口と出口に物々しい門がある。城壁内はきっとフリューゲルの絵画のごとく村人がてんやわんやの賑やか生活をしていた様子がくっきりと浮かぶ、そんな感じがした。村を一周しても多分、数時間で終わってしまうだろう、それにこれと言った名所らしきものはなく、廃墟となった城跡沿いに城壁を歩くのがこの村の観光。
しかし、そんな村だからこそその歴史の中にたまらない魅力があるのかもしれない。観光局主催のガイドツアーに参加してみよう。仏語が分からないとちょっと苦しいけど、一緒に歩いて村の散策をするだけでも楽しい。ガイドが案内する村の珍しい建物、昔ながらの家屋、解説が分からなくても立ち止まる場所にいるだけで何かこの村の歴史が分かって来たような気がする。この村の楽しみ方は線を引くように綴れ歩きをしながら散策する事にあると思う。そして夜この村をガス灯の柔らかさに近い電灯でライトアップしているが、そのはかなげな灯りに物悲しい味を覚えた。
でも、食いしん坊の私にとってこの村の最大の魅力は、レストランAuberge du Sereinで食べたPotage a lachataigne (栗のポタージュ) 焼き栗でおなじみの栗がポタージュになった。あまりの美味しさにパンで皿を綺麗に平らげた上、おかわりまで注文してしまった。
ノワイエ−ル・シュル・スラン観光局
『フランスで最も美しい村のひとつ』協会サイト
お勧めの本 フランスの「美しい村」を訪ねて 辻 啓一著 ISBN4-04-704-178-5  
フランスの「美しい村」を訪ねて
夢路とみこ
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