[092]味覚週間その2

味覚週間のせいかいつもよりもディジョンの朝市が賑わっている。所狭しと試食用の屋台が並び食いしん坊のフランス人が行列をなす。千葉県代表して食いしん坊の私も行列に参加して試食する。試食するのは新製品でも珍味でもありません。普段この市場で売っている物ばかり。ありきたりの食材をどう調理すればいつもの一品とは違うものになるかをこの試食会で教えてくれる。
ディジョンにあるホテル学校の生徒も参加してシェフ見習の学生がフルーツを美しく切っていた。こうやって切ればただのりんごもデザートになるわね、フムフムと思った。ブルゴーニュ銘菓のひとつにパン・デピス(スパイシーなパウンドケーキ)があります。これはブルゴーニュ大公が大変好んだものと言われるお菓子です。私にしてみれば黒砂糖のカステラを少し固く焼いたものです。英語ではこのお菓子をジンジャーブレッドと読んでいますが、アメリカでお腹いっぱいそれを食べた私は断言する、これは嘘だ。これは黒砂糖の固焼きカステラだ。

この味覚週間の市場ではパン・デピスの試食コーナーもありました。辛党の私はこれを殆ど食べないのですが試食だからとあって食べたらうまいじゃないの。伝統的なフランス料理コースではシャンパンは食前ではなく、食後近く、デザートの時に飲むようです。人の家に呼ばれて食事するときも私を招いてくれる人のところではデザートとクレマン(シャンパン製法の発泡性ワイン)が出ます。デザートの甘さにこれは良く合い、辛党の私でもこれならばデザートがいける。
いつも行くナイキ果実店(店主がナイキの野球帽を被っているので私が勝手に命名)では自家製ドライフルーツを試食があった。杏のそれをつまんでみたら赤ちゃんのほっぺのようそして甘い。誰かアルザスの白ワイングラスで持って来てと言いたくなりました。私の知る杏のドライフルールはスーパーで買うもの。固くてとても甘いから嫌いだけどフルーツの種類が減る冬はこれが常用食。ナイキ果実店、この杏のドライフルーツの美味しさの秘訣は?と尋ねると、「干しただけ」とあっけらかん。
子供の頃から既製の味に慣れている私には驚嘆の味覚週間です。私のような大人が増えるのを阻止するためにもやはり子供の頃から本物の味を教える、このフランスの食文化に対するプライドと熱意、あっぱれです。ディジョン朝市を観光目的のひとつにするならば10月2週目のこの味覚週間を挟むと良いですよ。

夢路とみこ

[091]味覚週間

フランスにはSemaine du gout味覚週間という感心する運動週間があります。これは米国から流れてきた食文化、ファーストフードやフィンガーフードの影響を受けて食事というものを軽視してきた最近のフランス人食生活に渇を入れようというものらしい。青少年の肥満体の増加は今やアメリカ並み。女性の社会進出によってお母さんがキッチンに立たなくなった。レンジでチンするものばかりが食卓に並ぶようになったと嘆いています。お母さんがキッチンに立たないのならお父さんが立てばよいと私は思うのですが。だって有名なシェフは男性が多いし、女性は感情に並があって味が一定じゃないから料理人向きじゃないと言うのだから。男性諸君、キッチンを君達に開放する、だから私に美味しいものを作って!

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