この通信局でも幾度か夏になると「グルメ歩け歩け大会」のようなワインと郷土料理を掛け合わせて楽しむハイキングのようなイベントがあることはご紹介済みですが、この手のイベントはワインの造り手のプロモーションになるだけではなく村興しにもなるという事で最近は新規参入の村が増えて来ているようです。
フランスワインの有名どころと言えばブルゴーニュ、ボルドー、アルザス、ロワール、ランドック、プロヴァンスと大まかに地方が浮かびますが、では、各地方の銘醸ワインの村と言えば、ブルゴーニュならシャブリ、ヴォーヌ・ロマネ、ボルドーならサンジュリアン、サンテミリヨン、ポイヤックとちょっとしたワインファンならここも浮かぶはず。
では、生産量も少なく、大した観光名所にもない、でも素晴らしいワインを造る隠れた銘醸地はどうすれば良い?という事でオラが村のワインをもっと知ってもらうには村まで来て試飲してもらうっさ、と始めたのがブルゴーニュ、ラドワ村のバラードグルマンであり、アルザス、シェールヴィラー村のサンティエールグルマンです。これらの村の成功に学び、ブルゴーニュ地方南部、サントネー村の造り手たちが立ち上がった。
[093]ディジョンマスタード
日本に帰るとき「お土産は何が良い?」と知人たちに聞くと返事はいつも「あのマスタード」と言われます。そして私は従順に数十個のマスタードの瓶を手荷物にして帰国。それはまるでブルゴーニュ大公時代のマスタード商人のよう。
ディジョンマスタードと呼べるのはディジョン近郊に工場を持つ4社。高級品として知られ早くから日本進出しているマイユ、ミッシュランの星付きシェフの多くが愛用するファロ、比較的一般家庭の食卓に挙げられるレーヌ・ド・ディジョン、そして私が夢中になっているテメレール。始めの3社のマスタードはどうも私には辛すぎて合いません。テメレール社のマスタードは酢が良く効いていて辛さ控えめなのでマヨネーズ感覚で生野菜に付けたりハムサンドを作るのにとても気に入っています。
日本は湿気があるから夏は多めに酢の物を取りますが、こちらは乾燥している上、あまり酢の効いた料理がありません。アルザス料理のシュークルート位かな私の知っているのは。そもそも酢の効いた料理はあまりワインには合わないと言われます。だからサラダを食べるときドレッシングは酢が入っているという事で通常はワインを飲みません。(私はサラダでも飲みますが)酢は充分に取らないといけないのでマスタードの酢の具合にも私は拘った結果がテメレール社。
テメレールとはブルゴーニュ家最後の大公の名前です。この人の娘のマリーが神聖ローマ帝国皇帝マキシミリアムに嫁いだものの既にブルゴーニュ家は衰退していてルイ14世によりリフランスに併合してしまったという悲しい結末。ブルゴーニュをこよなく愛する私としては味もさながらやはり大公の名前が掲げられているこのマスタードを愛し日本に広めなければという使命みたいなものを感じています。なんて言ったらすごいかしら。いやぁーただ単に私の好みの味で、船内で出したら日本人のお客様がとても喜ばれるので日本へのお土産はつもこれにしているのです。
勝手に自分をテメレール社対日マーケティング部長と決めている私がお勧めなのはバジル入りとロックフォール入りのもの。バジルは万能、ロックフォールは揚げ物に。マイユやファロはパリはもちろん、日本でも買えます。テメレールはパリでも買えますが普通のディジョンマスタードと粒々マスタードぐらい。私のお勧め2点やその他のカラフルな色と味はディジョン以外だと見つけ難いので是非ディジョンでどうぞ。
テメレール社のサイト:
http://www.temeraire.com
夢路とみこ