[191]おやじカフェ万歳!

フランスで強烈にこの国を意識させるのが「おやじカフェ」。主役の彼らたちは朝からビールやワインで鼻を真っ赤に染めてローカル紙を読み、まどろみながら時の流れを楽しむ。私のアパルトマンの側には2件あり、時々だけど人が遊びに来た時見物がてら朝ご飯を食べに案内する。
おやじカフェは、朝はおやじの聖地、しかしランチタイムは「お袋の味」を求めて付近の会社員やOLも来る。確かにここの食事はボリュームがあって日本の「定食屋」を思い出す。生姜焼き定食の替わりにクリームソースのポークソテー、ご飯の替わりにマカロニ。食べながら「おかぁさーん」と年の所為か目元がウルウル。つまり私にとっておやじカフェはおやじの聖地であり定食屋だから「安い、早い、旨い」だけで「お洒落」という形容詞は無縁のはずだったのに、シャルネイ・レ・マコン村にそれを覆す「おやじカフェ」を発見!

ここの主要顧客はおやじなので内装がその層に好まれそうなものが多いのですが、この店は昼食時の若き女性もちょっとは意識しているのか、店内はカントリー風にベルエポック風の調度品があったりします。感心したのはワイングラス。おやじカフェなのにワインが美味しく、色合いが綺麗に見えるようにとの配慮か、バカラ風チューリップ形をしています。マコン産のワイン産地という利点を生かしてかカラフで出すワインも数種類あって値段が安い。
ワインは結局ハーフを4種類飲んだけどプイィ・フュイッセなんてまるでアルザスの「遅摘み」のような黄金色と味の深さには言葉を詰まらせた。しかしこの店で度肝を抜かれたのは料理の質の高さ。10.50ユーロの定食に1.20ユーロを払い前菜とメインとチーズを注文(デザートは追加不要)。メインのトマトファルシーは私の好物、シェフの決め細やかな作業がお皿の上で花開いた。おやじカフェでレストランのレベルが食べれた。出されたチーズはこの地方のブルー・ド・ブレス。昼食の営業開始した時から室温に戻していたのでしょう、充分に融けて滑らかさが赤ワインによく馴染んだ。こんなサービスはおやじカフェどころか、ビストロでもあまり期待薄なのだが。ここにサービスの真髄を見た!
Le Cafe de la Gareへの行き方
電話:03-85-34-87-99
Macon Ville駅裏側のバス停からLigne 7のCharlon Sur Saone
行きに乗りCharnay下車すぐ前

夢路とみこ

[190]パリでごはん(3)

12区で宿泊した民宿のオーナー夫妻が「ワインが好きならきっとこの店気に入るよ」というのでその店に向かう。場所はメトロ駅Faidherbe ChalignyからNationに向かいFaubourg Saint Antoine通りを歩くとすぐ。相当の人気店の理由は、ワインリストのすごさか、キッチュな内装にあるのか、はたまたカジュアルな接客に惹き付けられるのか私の想像は尽きない。私が行った夜も店内は8時というのに予約席以外は満席。「店内は満席、外ならOK」と乾いた口調にムッと来たけれど、一元客に媚びないのがパリジャン?

ここでたまげた事二つ。一つはワインリスト。ワインバーとは聞いていた物のリストはボトルでの値段しか書いてないのに、注文すればハーフでもグラスでも出してくれること。飲んだ分だけ割り出してくれるらしい。えー、ここにあるワイン全部グラスでもOK?それはワインの消費量にも自信があるからそんな事出来るのでしょう。ワインの産地もフランス各地が網羅され大都会パリを見た。参考書のように分厚いワインリストをゆっくりと眺めながらVin de Paysなのに他のAOCレベルのワインとほぼ変らない値段の20ユーロというこの手のものではちょっと高価かな、と思えるDomaine TriennneのNuns-les-Pins92年を注文。この国のドメーヌには設備投資がかかるAOCへの格上げを断念してVin de Paysで勝負する小さなドメーヌがあり、AOCやそれ以上のクラスのワインに負けない物を作ると聞いた事がある。たぶん、この夜の私のワインはそんなワインだったのだろう。
たまげた事の二つ目。オーナーらしきムッシュのぶっきらぼうさに反するマダムの外国人客へ向けるお茶目な英語のキュートさ以上に驚いたのは、ナプキンがリネンや紙でなく、トーションと呼ばれる布巾。「えー、トーションをナプキンにする、あんたは!」と心の中で絶叫。この布巾、厚手のコットン地で丈夫の上、ワイングラスなどガラス製品をこれで磨くとすごく綺麗だから船のキッチンはもちろんのこと、私の自宅のキッチンもこればかり。でも、ナプキンとしては使わんぞ!味良ければ全て良し、という店でした。
Chez Ramulaud
269,rue du Faubourg St. Antoine, 75011 Paris
Tel 01 43 72 23 29

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