[021]中性子線はなぜ人体によくないか?
放射線には色々なものがありますが、主に以下のものに分けられます。
α(アルファ)線: ヘリウムの原子核が飛び出して来るもの。
β(ベータ)線: 原子核の中から高速の電子が出てくるもの(電子線)
γ(ガンマ)線: 原子核からα線やβ線出たあとに残ったエネルギーが電磁波の形で出てくるもの(電磁波。光子線)
X(エックス)線: γ線と同じ電磁波ですが、原子核からではなくX線発生装置から出てくるもの。
中性子線:原子核の中の中性子が飛び出して来るもの。
この中でα線は紙一枚で遮ることが出来ます。ベータ線はアルミの板で遮ることが出来ます。しかしガンマ線は厚い鉛やコンクリートでなければ遮ることが出来ず、中性子線に至っては、それすら透過してしまいます。
したがって放射線被曝で問題になるのが、さえぎる事のできない中性子線です。
放射線が人体を通過するとどういうことになるのでしょうか?通過するのだから別に問題ないじゃないかと思われるかもしれません。ただ通過するだけでは問題ないのですが、通過する時に細胞の分子を変化させるのです。エネルギーを持った放射線は分子の中の電子を弾き飛ばし分子構造を変えてしまいます。細胞は元に戻ろうとしますが、分子構造を変えてしまうので元に戻りません。症状としては火傷みたいになります。たんぱく質に変化が生じるわけです。ちょうど電子レンジの中に入ったようなものでしょうか?
被曝で気をつけなければならないのは、さえぎることのできない中性子線なのですが、放射性物質を吸い込んでしまった時は、体内の放射性物質が撒き散らす放射線に被曝します。体内ですからさえぎるものがありません。この場合はα線であっても重大な影響を及ぼします。
東海村で事故があった直後、室内退避警告が出たのは、この放射性物質を被曝を予防したものです。事故現場から放射された中性子線に対してはなんら防御になりません。幸い中性子線の量が少なかったため大事に至らなかったですが、中性子線が大量に放射されていたら、と思うとぞっとしますね。