[042]肥後守(ひごのかみ)
「肥後守(ひごのかみ)」というのは本来は江戸時代にあった役職名ですが、ここではナイフの事をいいます。大衆的な折畳み式のナイフで、安価ですが切れ味にこだわった代物です。「肥後守」は明治37年、三木市で刃物問屋を営む重松三郎が九州から持ち帰った2丁の刃物を見本に、三木の鍛冶屋永尾重次に造らせたのが始まり。日本のナイフの代名詞的存在で、その名称は肥後守加藤清正のお抱え鍛冶が鍛えた名刀《肥後正宗》の名声にあやかったものといわれます。
「肥後守」とは片手で刃の出し入れのできるナイフのことで、品質を保持するために登録商標されています。以前は「肥後守」を製造する業者は30社ほどありましたが、社会党浅沼委員長刺殺事件の際に「肥後守」がやり玉にあげられ規制されてしまったため、それ以降「肥後守」の売れ行きは急激に落ち込んでしまい、現在も作っている業者は1社しかないのだそうです。
最近話題になった「バタフライナイフ」はまさにおもちゃですが、「肥後守」は安いけどほんものです。昔はこれで鉛筆を削ったり、竹ひごで竹とんぼを作ったり工作したものです。今はナイフの使い方も知らない子供がほとんどで、ある実験ではナイフで鉛筆を削れた小学生は22人中一人だったとか。
ナイフというのは心ときめくものがあります。これは人類が狩猟民族だった血がそうさせるのかもしれません。