[530]浮世

浮世とは長い戦国時代から抜け出て、ようやく平和が訪れた江戸時代に、それまでの辛い「憂き世」から気楽に生きる「浮世」と言う意味で使われはじめたとされます。やがて浮世は現代風、当世風という意味を持つようになり、浮世絵、浮世ゴザ、浮世袋など新しいものを意味する名詞として使われるようになりました。

浮世はまた虚しいというような意味も持ちます。浮いてるからホントの姿ではないというところが「バブル」にも似ています。そういえば元禄という言葉も平和な江戸時代を象徴する言葉ですが、昭和元禄という言葉もあったっけ。元禄寿司や元禄大名らーめんなど当時の外食産業も豊かでした。

そういういう言葉を最初に使った人は、ホントの意味を知っているところが、なんともニクイ。昭和元禄と初めて使った人は、この平和が終わる事を知っていたから使ったのではないだろうか?

浮世絵もそうですね。平和な社会を映し出す浮世絵はペーソスあふれるものですが、先行きの不安を洒落と風刺でうまく織り込んだ風刺文化ともいえます。しかし、いつの時代にも先見の明をもつ人物がいるものです。

浮世絵といえば安藤(歌川)広重の東海道五十三次と葛飾北斎の富嶽三十六景が有名です。切手の図柄にも多く使われています。北斎は他にも春画も多く描いており、江戸庶民を大いに楽しませたことでしょう。春画とは男女の交わりを描いたアレです。春画は別名笑い絵ともいいますが、どれも男根が異様に大きく、なるほど笑えます。

浮世絵は、絵師としては肉筆で書くのが誇りというような風潮でしたが、肉筆では描くのも大変。特に風俗画は多くの人が欲しい、ということで発達したのが版画です。版画は言ってみれば大量に同じものを作る印刷技術ですから風俗画にはもってこい。以後、版画は発達し、庶民の欲望は文化を変えた一例ともいえるものです。

【関連記事】
週刊マナー美人[116]江戸しぐさ