[109]魚醤(ぎょしょう)

昔、ラーメン屋をやっていた時に考えたメニューに、タイ風雑煮というのがあった。テナントビルだったので、スナックで働くタイの女性がよく来るので彼らをターゲットにしたメニューを、と開発したもの。結局は彼らタイ人には受けなくて、日本人に受けたメニューだった。その雑煮はナンプラーで味付けしたものだった。

ナンプラーはタイの魚醤である。魚醤とは魚から作った醤油のこと。日本で普通に使われている醤油は大豆を発酵させて作ったもの。つまりその地域でよく獲れるものを発酵させて作ったのがその地方独特の醤油となる。魚を常食する地方では魚から醤油を作っても不思議ではない。もちろん日本にも魚醤はある。「いしる」、「しょっつる」などがそうである。秋田のしょっつるや四国のいかなご、能登のいしるは日本でも代表的な魚醤。奈良時代、中国から伝来したという穀醤より以前に作られた魚醤油は日本の醤油の原点とも言える。

海外のもので手に入りやすいのは、タイの「ナンプラー」、ベトナムの「ニョクマム」。大きな食料品店やすーパーで手に入る。値段も安い。買う時は小さなもので十分。魚醤はくせがあるので少量で間に合う。前述の雑煮もわずか1、2滴たらすだけ。それなのにぐっとコクが増す。そのまま舐めてもおいしくは感じないのに不思議だ。

魚醤を買ったら色々な料理に使ってみよう。鍋料理や、カレー、シチュー、ラーメン、味噌汁などに隠し味として使う。あくまでも隠し味。入れすぎると臭くて食べられなくなる。特に魚醤初心者は要注意。