[110]しょっつる

秋田の代表的な料理といえば「しょっつる鍋」。しょっつる鍋」の「しょっつる」とは石川の「いしる」と同じ類で、イワシなどを同量の塩で漬け込んで作った醤油のような物です。これをダシ汁に、ハタハタ、ネギ、春菊、豆腐などを煮込んで食べる鍋です。ちなみに、しょっつるを漢字で書くと塩汁となる。

「いしる」とは「魚汁」が訛ったもので、イワシやスルメイカを長期間ゆっくりと自然発酵させて作った調味料。秋田の「しょっつる」やベトナムの「ニョクマム」、タイの「ナンプラー」と同じ魚醤です。

魚醤の原料はどこの国も一時期に大量に獲れる魚を原料にしている。たくさん獲れたはいいが、さてどうしよう?と思いあぐねた末、塩漬けにして保存するようになった。その時に染み出る汁が思いのほかうまいのに気づき、醤油として定着する。

普通の醤油は麹などを加えないと発酵が始まらない。ところが魚醤は魚の内臓に発酵物質が既に含まれているので何もしなくても発酵が始まる。そういう意味では自然な食品であり、穀醤油よりも歴史は古い。しかし独特の臭みはうまみがあるとはいえ洗練されているとはいえず、食にうるさい日本や中国では魚醤より風味や香りで勝る穀醤油が席巻するようになる。