[121]頭取(とうどり)

普通の会社はその会社の長を社長という。代表取締役社長とも言うし、取締役社長とも言う。社長=代表者とは限らない。取締役社長は代表者ではないし、代表取締役専務は代表者である。代表者であるなしにかかわらず、会社の長は社長であることには間違いない。ところが銀行のトップだけはなぜか「頭取」と呼ぶ。

頭取は江戸時代、歌舞伎の興行で楽屋を取り仕切った人「カシラ」のことを指す。頭取の由来は「音頭」をとる、つまり「音の頭」であり、雅楽の首席演奏者を指していう。江戸後期になると歌舞伎から転じて、米会所(取引所)の総括責任者も頭取と呼ぶようになる。

さらに明治2年に銀行の前身の「為替会社」が全国8か所に設けられた時、出資者の代表を頭取と呼び、3年後国立銀行条例に基づき各地に銀行ができた時もトップを頭取とした。

しかし銀行の全部が全部頭取制をとっているわけではなく、住友銀行は当初社長制をとっていた。また信託銀行の多くは社長制をとっている。