[293]天狗の爪
高尾山の自然を守る団体が、圏央道のトンネル工事の差止めを要求し、ついに訴訟を起こしたようですね。高尾山は東京に近いけれど自然がたくさん残っている山。今回の訴訟は16年来のもので、生態系を壊す道路工事に反対するものです。
高尾山に行くといろいろなおみやげ物が売っています。ここで目に付くのが天狗グッズ。鼻の長いお馴染みの天狗のほか、カラス天狗も居る。このあたりはどうも天狗が活躍した場所らしい。
ところで高尾山に近い、秩父三十四ヶ所観音霊場の第三十番札所瑞龍山法雲寺には「天狗の爪」が寺の宝として安置されています。秩父あたりは山中からよく出土するこの天狗の爪の正体は、じつはサメの歯なのです。
サメの歯といっても古代サメで、今から400万年~2500万年前に棲息した体長約13mに達するカルカロドンという巨大なサメで、これは「人食いザメ」として知られる現生ホオジロザメの祖先ともいわれています。このサメの歯の化石は日本をはじめ世界の各地に多数産出しています。
秩父盆地も太古の昔は海だったようで、サメの骨は軟骨のため化石になりにくく、丈夫な歯のみ化石で残ったのですね。しかし山奥でサメの歯の化石が見つかっても誰もサメの歯とは思わないでしょう。それこそ天狗の爪と思ってしまうのが自然ですね。