[398z]五島プラネタリウム
渋谷の東急文化会館の屋上にドームが輝くようになったのは1957年の4月。以来44年ドームの内側に夜空を投影してきた五島プラネタリウムが3月11日に閉館しました。手軽に楽しめるサイエンスの場所として、デートの場所として、あるいは仕事の合間の休息の場所として親しんだかたも多いのではないでしょうか?44年間の来場者は約1600万人。その中にはもちろん私も含まれるし、多分あなたも訪れたことでしょう。
五島プラネタリウムの正式名称は「財団法人天文博物館五島プラネタリウム」といいます。五島とは東京急行電鉄株式会社(東急)の当時の会長五島慶太のことで、会長の寄付によって開館したことから命名されたものです。この年は人工衛星が世界で初めて打ち上げられた年でもあり、世の中が宇宙に目を向け始めた頃でもあります。
プラネタリウムは360度の全天をドームに映し出すのですが、そのための機械は極めて特殊で精度を要求されます。五島プラネタリウムの投影機はドイツのカールツァイス社の記念すべき第一号機が使われていますが、閉館までの44年間を現役で通した実力もすごいことです。
渋谷という一等地にありながら、東急文化会館の8階という地味な立地のせいでしょうか。年々来場者が減り、晩年は経営も芳しくなかったようです。母体の東急電鉄自体改革を迫られている時期でも有り、利益を生まない施設は消え去る運命にあるのでしょう。
しかし99年の閉館決定から、閉館を惜しむオールドファンが全国から訪れ、閉館間際には整理券を配るほど盛況だったようです。最後の投影は、五島プラネタリウムの会員のみに限定され、その投影の様子はインターネットでも中継されました。広く天文学の底辺を支えてきた五島プラネタリウムの勇退をこころから拍手で送りたいと思います。
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