[635]溺死
夏です。水の事故が多い季節です。
海やプールでの溺死(できし)事故は毎年500件以上と後を絶ちません。自分は大丈夫と思う自信が、事故の原因かもしれません。人間は基本的に水の中では生きられませんので、水を侮らないよううまく付き合うことが大事です。
溺死の原因としてよくみるものは「心臓麻痺」です。しかし心臓麻痺というのは心臓が止まることですが、何らかの原因がなければ止まるはずがありません。心臓が止まる前に何かの原因があると考えられます。また、泳げない人はともかく、泳ぎの達者な人まで溺れることがあります。なかには十分に背の立つところでも溺れる例もあったりする。これはなにかほかに原因があるのではないか?
そこで溺死者を調べたところ、鼻と耳を繋ぐ細い耳管というのがあるのですがここに水が入るとほとんどの事例で中耳に出血が見られたのです。人間というのは基本的に鼻から吸って口から吐くという呼吸をします。ところが泳ぐ時には、この逆をしなければなりません。つまり空気を口から吸って鼻から吐きます。
しかし、何らかの拍子に鼻から呼吸をして間違って水を吸ってしまった時、耳管に水が入ってしまい内出血を起こします。この出血が平衡感覚をつかさどる三半規管の働きを阻害し、平衡感覚が麻痺し、水面と水中を判別できなくなり、水の上に出ることが出来なくなり結果水を大量に飲んで心臓が停止し溺れ死んでしまうのです。
よく体操をし、水に入るときは体を水温に慣らしてからといわれますが、その前に正しい呼吸方法をマスターしておくことがより大事なわけです。そこで泳ぐ時の注意ですが、
・息は口から吸って鼻から出す
・鼻から水を吸ってしまったら泳ぎを中止して水から出る
・風邪気味のときなど耳の調子が悪い時は泳がない
以上の点を留意して楽しい夏を過ごしてください。