[838]タンス株とは?
株式会社に出資した場合、その証として出資した金額分の株券が発行され、その株券は有価証券として大事に保管されるのが普通でした。株券は紙に印刷されており、それを自宅で保管していたりするのが俗に言うタンス株です。証券会社に預けてあっても特定口座の対象となっていない上場株式等もタンス株ということがあります。
政府はこの株券のペーパーレス化(電子化)を推進する方針です。株券を電子化しその流通と管理をしやすくしようとするものです。といってももっと深い魂胆は、株売買に生じた利益に対してしっかり税金を取る、ということが最大の目的でしょう。
株券を電子化することで企業としても発行業務にかかるコストが大幅に削減でき、経済効果も見込めるとしているようです。2009年6月までに、株式会社に義務づけられている株券の発行は廃止となることが決まっており「株券不発行制度(株券ペーパーレス化)」が上場企業を対象にスタートします。
個人投資家に関係が深い上場企業の株式については、ペーパーレス化後はすべて新設される「株式振替制度」のもと管理されることになります。株取引は証券会社などが管理する振替口座簿へ記録され、所有株数は証券口座の残高で示されることになります。株の売買は現在でもインターネットで出来ますから、その管理も全てインターネット上で完結出来るようになるということです。
そこで問題となるのが現在個人投資家の手元にある「タンス株」です。そのままにしておくとペーパーレス化後には無効となるため、注意が必要なのです。各証券会社は手持ちのタンス株が無いか、あった場合は2004年中に証券会社に移管するよう呼びかけています。
ただ、こういった株券などは高齢者が保管していることが多く、証券会社と日頃取引があれば、そういったアドバイスを受けられますが、長らくタンスの肥やしとなっていたタンス株は、本当に忘れられている、ということが大いに考えられます。皆さんも、知人や高齢や身内に一度確認するといいでしょう。
◆移管を忘れるとどうなるか?
ペーパーレス後、株券自体は無効になりますが、株を所有している権利は保全されます。発行企業は株主名簿に従って信託銀行などにタンス株の所有者名義の「特別口座」を開設し、所有株式を移管して保全することになっています。
そこに実際の所有者が証券口座に株を振り替えるまでは株式取引は事実上できません。権利が消滅してしまうわけではないのですが、運用することが出来ないというわけです。ペーパーレス後の管理は楽になりますが、そこに至るまでの制度移行にはかなりの混乱が予想されます。
◆特定口座へ移管することのメリット
特定口座に株を移管すると、証券会社等が株主に代わって上場株式等の取得価額や損益の計算を行います。また作成された「年間取引報告書」を利用して、簡易な確定申告が可能となります。
さらに取引の都度、利益から源泉徴収を行い納税する「源泉徴収あり」を選ぶと特定口座内の売却に関して上場株式等の譲渡に係る確定申告が不要となります。
(特定口座への移管は平成16年末までですが、平成17年度税制改正により、新たなタンス株の特定口座預入れ制度が平成17年4月より導入される予定です)