[879]山火事

オーストラリアにはバンクシアという植物が自生しています。この植物はドライフラワーのように花を咲かせ、その実は非常に燃えやすい形状をしています。そして、山火事が発生するとその熱で実がはじけて中の種が周囲に飛び散ります。通常は山火事で焼けてしまったら木は燃えてしまうのですが、その山火事を逆に子孫繁栄のため利用しているのですね。

このように山火事を利用する直物は他にもあります。ブラックボーイという樹木は毎年定期的に花をつけることはなく、山火事があるとその後に花を咲かせる性質をもっています。火事の後に多くの花を咲かせ実をつけるのです。まさに山火事との共存を選んだ植物の一例です。火事で燃えて幹が真っ黒になってしまいますが死に絶えることはありません。その黒焦げの勇姿からブラックボーイの名がついたといわれています。

またコアラの主食として有名なユーカリの木も油分を多く含んでいるため、山火事が発生するとよく燃えます。しかしこの火事の熱や煙はユーカリのタネが発芽するのを助ける作用をしているのです。

もともと、オーストラリアには山火事が多く、その原因はほとんどが自然発火。落雷や倒木の際の摩擦熱、あるいは捨てられたガラスがレンズの役割をして太陽光を集め発火させることもあるでしょう。その地域が非常に乾燥していることも原因の一つです。そして木そのものも燃えやすくできているのです。

こうした自然の営みを見ていると自然の樹木が山火事と共生してきた事がよくわかります。人間も動物達にとっても山火事は脅威ですが、オーストラリアの生態系にとっては大切な「生まれ変わりのサイクル」の一部。そのためオーストラリアの国立公園などでは、森林の再生を促すために、公園内の一部に火を放つ事もあるとか。

オーストラリアに住む人にとって山火事は自然の一部として受け止められており、災害と思えるような事にも上手く付き合ってしまう姿勢には学ぶところが多いといえないでしょうか。

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