[901]お八ツ
電球の発明による照明器具が発達する前の時代では、人々は日の出と共に行動し、日没と共に「休む」という生活を送っていました。その頃の時間感覚は今のように時計が主体ではなく、太陽だったのです。太陽が昇る、太陽が真上に有る、太陽が沈む、これらのことが非常に大事だったですね。
その頃の時刻の基準となるのは、日の出、そして日の入りです。それぞれを「六ツ」とし、日の出を「明六ツ」、日の入りを「暮六ツ」と決めました。「明六ツ」から「暮六ツ」までを昼として6等分、「暮六ツ」から「明六ツ」までを「夜」として6等分し一日を十二刻としたのです。
時間の進み方は「明六つ」から五ツ、四ツと減って行き正午は突然九ツになります。正午を過ぎると、八ツ、七ツとまた減っていき、暮六ツとなって夜のスタートとなります。
夜も同じように「暮六ツ」から五ツ、四ツと減っていき、真夜中の「正子」に九ツになります。子の刻を過ぎると八ツ、七ツと減っていき「明六ツ」となって一日のスタートとなります。
なぜ、いきなり夜明けが「六ツ」なのかといえば、その基準となるのはやはり太陽が南中する正午を昼の九ツとし、その12時間後を夜中の九ツとするという決まりごとがあったようです。とすれば、やはり基準は太陽の南中でしょうか。
日本は四季があり、冬と夏とでは昼の長さが違うのですが、当時は、そんなこともお構いなく、長くとも短くとも昼は6等分で示されます。冬でも夏でも太陽が真上にあれば九つなのです。合理的といえば合理的です。
ちなみに「三時のオヤツ」はこの正午の九ツの次である「八ツ」から「お八ツ=オヤツ」となったようです。おなかのすくこの時間にお茶をしていたのが「おやつ」のはじまりです。
ところで日の出と共に仕事を始めれば、お昼までにおなかがすきますね。昔は丁度10時ころを「お四つ」といってこの時間にもお茶をしました。しかし文明と共に夜が長くなると朝も必然遅くなり、仕事がスタートしたばかりの10時にお茶をする習慣は無くなってしまいました。しかし、夜明けと共に仕事が始まる農家では未だに「お四ツ」にお茶をするということはあるようです。