[977]ウサギ税

2013年9月26日

第960回のコラムではウサギの数え方の話をしました。今日はウサギにかけられていた税金の話です。

今、私たちが暮らす社会の税制は明治維新後の1873年(明治6年)に地租改正条例を公布、これを中心に組み立てられた税制です。すでに酒税やたばこ税などもあり、明治初期に設けられた税金の重要な財源となっていました。その中に面白い税金があります。ウサギ税です。

ウサギ税は1873年の東京府布達「兎取締ノ儀」に基づいて、ウサギの飼育にかけられた税金なのです。兎取締ノ儀は1876年の改正で「兎取締規則」と改称されましたがその内容は次のようなものです。

(1)飼養頭数の届け出
(2)1頭につき、月1円の府税納入
(3)無届け飼養には1頭につき、月2円の過怠金納入

なぜこのような税金が課せられていたかというと、当時はウサギが投機の対象になっており、国民が競ってウサギを飼ってからなのです。理由は何だったのでしょうか。

ウサギは台所のクズ野菜で育つし、たくさんの子供を生む。毛は刈り取って布団の中綿になり、肉は食用、皮は被服になる。つまり、簡単に飼育できて捨てるところがないというわけです。珍らしい種類のウサギはペットとしても高額で売れる。明治維新以後職を失った武士を中心に儲かるウサギ飼育ブームが広がったとされます。

しかし政府がこれを見逃すわけがありません。すかさずウサギの飼育に税金をかけました。当時1羽につき月1円の課税だったようです。当時の物価からすれば大変高い税金です。

ウサギブームは何度かの起伏を繰り返しましたが、ウサギ産業は国家の重要な産業にまでに成長しました。やがてウサギ税は1879年に廃止され一般税に吸収されましたがウサギが明治以降、国家財政や農家の家計に長く貢献し続けたことは確かなようです。