[1019]ヤモリとイモリ

ヤモリという生物がいます。ヤモリとは「家守」と書き、その名のとおり家を守る生物として長年親しまれています。悪さはせず、天井裏に住みついて蜘蛛などの小動物を常食としています。新しい家では滅多に見ませんが、古い農家や民家では今でもニホンヤモリなどを見ることができます。

野生の動物なのに、なぜ民家に住むのかという理由は、もともとは中国などで野生であったものが、人間の生活圏で余禄を得るようになって民家に住むようになった種が、貿易船などに紛れ込んで日本にやってきたという説が有力です。つまりニホンヤモリは外来種。

ヤモリは爬虫類のトカゲの仲間で、緊急時にはトカゲの特徴である尾を切って逃げるという技を持っています。切れた尾の部分はしばらくすると再生してきます。

また、足には吸盤が付いているとよく言われますが、吸盤ではなく細かい毛が生えていて、この毛のおかげでガラスなどにつるつるの面でも垂直に登ることができます。この毛の作用はよくわかっていない部分も多く、接着剤に利用できるテクノロジーを持っているらしいと、近年注目されているヤモリです。

似たような生き物に「イモリ」というのがいますが、これは田んぼや池・沼の中に生息する生物でこちらも滅多に見なくなりました。イモリはカエルやサンショウウオなどの仲間の両棲類で、ヤモリとは別物。ヤモリは水の中には棲みませんが、イモリは水の中を常時棲家としています。

ところでヤモリについてはこんな逸話があります。

昔、静岡県の旧家で25年ぶりに改修しようと壁板をはがしたところ、ヤモリが一匹釘に打ち付けられていた。しかも驚くことにこのヤモリ生きている。背中を釘で固定されたまま元気にぐるぐる動いていた。ということは25年前の改修のときに運悪く大工に釘で打ち付けられて、そのまま25年間生き続けたということだ。

不思議に思ってよく調べてみると、周りに小さな穴がある。どうやらこの穴をたどって、ヤモリの奥さんが食べ物を運んだらしい。25年間も変わらぬ愛にただ脱帽。
(2000.03.17のコラムを加筆修正)

莽翁寒岩様よりご意見をいただきました。
ありがとうございます。

いもりは、蠑と書くのだそうです。19年浅草空襲で焼け出され、伊勢志摩、鳥羽の日和山の奥に
家族で避難したおり、二年生の、土地のこを知らない私はこの蠑を焚き火で食しました。
味のないものでした。その後、ものの本で、守宮(やもり)の仲間ではなく、蛙の仲間で両生類ということでした。今も事典ではもそうなっていました。同じ仲間と誤解されないように、記事のご工夫をお願いします。