[1225]文民統制

2013年5月17日

以前、元自衛隊航空幕僚長田母神氏が、政府見解と異なる論文を発表して物議を醸しましたね。内容は「日本軍は侵略していない」というものです。政府見解としては、第二次世界大戦以前の日本軍による占領は侵略であるという認識のもと、国家として謝罪するという立場をとっています(いわゆる村山談話)。これに反する論文のため、また自衛隊の幕僚長がこのような右翼的な発言をすることは、日本政府としては対外的に困ることになります。

先日の自民党と民主党のこの件に関する対談を見ていましたら、自民党議員は「驚いた」、民主党の意見は「政府の責任を正す」というものでしたね。その際に文民統制をしっかりやる必要がある、というような意見もありました。

これは、田母神元幕僚長の意見が軍事的であり、軍事国家を目指しているものと捉え、それを国民が監視、コントロールすることを今一度確認する、つまり文民統制を強化するというのが趣旨です。

文民統制とは、軍部に対して文民=国民=一般人が優先し、国民が軍部を統制するという趣旨の言葉です。シビリアンコントロールともいいますが、英語表記ではcivilian control of the militaryとなってミリタリーつまり軍部を統制するということが書かれてもっとわかりやすくなっています。日本語で文民統制といわれてもわかりにくいのではないでしょうか。

この「文民」ということばは日本国憲法を制定する際に造られた言葉とされています。その際に「文官」「地方人」「凡人」など、軍人ではない者に相当する語として候補があがりましたが、最終的に「文民」に落ち着いたようです。つまり文民とは軍人ではない人のことです。

第二次世界大戦以前の日本では、軍人が内閣総理大臣を務めることが多々あり、政治と軍部が癒着しているのが問題となっていました。軍部=武力を政治に使わないというのが、文民統制の意義となっており、民主主義国家では必須項目となっています。

今回文民統制が色々言われるのは、幕僚長は政治家と同じ立場であるので「軍人以外の人間であることが必要」という意味でいわれているのです。このことは日本国憲法第66条2項で謳われています。

《政軍分離を目的とした日本国憲法第66条の文民規定》

1. 内閣は、法律の定めるところにより、その首長たる内閣総理大臣及びその他の国務大臣でこれを組織する。
2. 内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない。
3. 内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。