[288]守り子
昔、子供が生れると子守りは大体婆さんの役目でした。婆さんがいないときには守り子を雇います。守り子とは子守りをする子供のことです。子供といっても7~10歳くらいの女の子で、その家の子ではなく貧しい家から雇うのです。したがって雇われる方は口減らしの為、雇う方はもちろん裕福でないと雇うことはできません。守り子は山間の農家から町の商家へと出されるのが常です。
これを子守り奉公といいますが、衣食住は困らないものの、お手当てはほとんど無く、盆と暮の年2回に少しだけもらえる程度です。奉公は年季を約束として出されます。年季とは年極め。つまり12月15日あたりが契約日であったとされます。盆暮れは家に帰れますがそれも半日。年季が終わらないうちはまた奉公先にもどらねばなりません。その行き来は、ぼろをまとい、背中には寝泊りに使うゴザを背負っていました。
守り子は子供をおんぶし、子守唄を歌います。本などの挿絵で守り子が手ぬぐいを前結びにしているのは、子供が髪を引っ張られないためです。伝えられている子守唄の多くは、母親が子供に唄って聞かせるのではなく、守り子が子供に唄って聞かせたものです。
子守り歌のほとんどは、寝かせ唄あるいは眠らせ唄でありますが、中には里に帰りたくても帰れない、その悲哀を歌ったものも少なくありません。守り子といっても子供です。親が恋しかったでしょう。山村農家が本当に貧しかった明治時代の話です。
「加賀に伝わる子守唄」
~七つ八つから子守りにでたらァあー
悪童(こわら)める。
女郎(めら)せせるゥうー
~親のない子のあのざま見されェえー
裾(しそ)を結んで肩に掛けェえー
~こんこん今夜ははやおか祭りィいー
しもて行くわいね親のそばァあー