[232]燻製(くんせい)

スーパーに買い物に行くと、肉売場にはハムやソーセージが所狭しと並んでいます。ベーコンもあります。売場を変えれば鰹節なんかも売っていますね。これらはすべて煙で作る「燻製」なんです。鰹節が燻製だったとはちょっと意外でしょ?

燻製は食べ物を煙で燻す(いぶす)調理方法です。起源は定かではありませんがたぶん人類が「火」を手にしたときから付随するようにこの燻製(煙の文化)も発展したと推測されます。日本では1万年以上の前の縄文時代の遺跡から燻製を作っていただろうとされる「煙道」が鹿児島県・上野原遺跡で発見されています。

太古の昔から、火を囲んだ居間に食べ物をぶら下げ、焚き火の煙にあたったその食べ物は独特の風風味をかもし、またうまみも増すことに気が付くのにそう時間はかからなかったことと思います。

燻製には木を燃やした煙が必須ですが、どんな木でもいいわけではありません。燻煙材に適したものは、クルミやヒッコリー、桜やリンゴ、ナラやブナなどの広葉落葉樹に限られます。一部の地域では針葉樹などを使うこともありますがこれは特殊な例。

煙にはフェノールという物質が含まれています。これはいわゆる「焦げ臭い」匂いですが、このフェノールと食品に含まれるカルボニル系化合物、また非カルボニル化合物の三つが合わさって、独特の風味と保存性を提供してくれるのです。

前述の鰹節は、燻煙の技術にカビの力を借りています。もともと燻製はたくさん取れた物を保存しておくための生活の知恵。四国の土佐では夏にたくさん獲れるカツオを何とか保存して、一年通じて使いたい。そんな思いが知恵となり、世界に誇る伝統の食品が生まれたのです。

つづく