[707]朝鮮残留孤児
残留孤児というのは、戦争が終わって、植民地化した地域から撤退する時に言うにやまれぬ事情から置き去りにされた子どもたちのことを言います。中国残留孤児はよく聞きますが、朝鮮残留孤児ってあまり聞きません。しかし多くは知らされていませんが実際に存在します。置き去りにした親はかたくなに口を閉ざしたままです。なぜなら我が子を置き去りにするなど鬼畜にも劣る行為だからです。しかし現実にはそれもやむをえない状況だったのですね。
日本は敗戦するまで、中国や韓国北朝鮮、南はシンガポールやスマトラ島までなど広範囲に渡って軍拡し、なかば強制的に植民地化していました。軍が主体の武力による植民地化ですから現地の人はよく思っていません。それがいきなりの敗戦ですから、今まで日本人に対する鬱憤が一挙に爆発し暴動に近い事態となりました。現地にいた日本人は寝耳に水。大変なショックだったと聞きます。
そんな中ほうほうのていで日本人は引き上げをしてくるわけです。軍人はまだ優遇されていました。しかし大変だったのは民間人です。引き上げに使う列車や船には限り有りますから、みんながみんな引き上げできるわけではありません。お金もかかりますし食料も要ります。タイタニックではありませんが、他人を蹴落としてまでして、初めて生きてかえって来ることができるのです。
そういう中で、乳飲み子を抱えた母親、父親が泣く泣く子供を現地に置いてくるのは無理なからぬこと。中には子供を売ってお金に変えた人もいるとか。親はほんと残留孤児に対し顔向けできません。しかし、人間に限らず、生物は極限の状況に置かれますと、子供さえも食います。子供を犠牲にしても自分が助かろうとするのは本能なのです。
中国の残留孤児が日本の身寄りを訪ね、自分の身元を明確にすることを政府が行なっていますが、残留孤児は中国だけでなく北朝鮮にもいたとされます。誰も触れませんが、その数は何万人という数だといいます。
北朝鮮との国交は正常ままならぬ状況ですがいつか国交が回復したとき、朝鮮残留孤児について何らかの動きがあるかもしれません。しかし戦争が終わって58年。その直前に生まれたとしても、若くて58歳です。多くは60歳を超えているでしょう。その親に至っては、もう80歳を超えているはず。長引けば、残留孤児の大方が老人となってしまい、その親はもうこの世には居なくなってしまいます。
なんの手がかりもなく、日本で報道されることもなく、朝鮮残留孤児は北朝鮮でその命終わるのです。