[536]米の研ぎ汁

前回、無洗米の話をしました。米の研ぎ汁が環境を汚染するという話です。確かに生活雑排水は深刻な環境問題を引き起こしていますが、これは下水が完備していない地域での話。家庭の雑排水がそのまま河川に流れ込んでいる地域では、米の研ぎ汁は粉石けんの15倍以上の汚染源になるとされています。汚染源はなにも化学物質と決まったわけではないのですね。普通の雑排水も汚染源になるのです。

ただし、ここで米の研ぎ汁だけを悪者にすることはできません。下水設備の負荷から話をすれば、それよりずっと汚染の負荷となっているのがトイレからの排水。この負荷は米の研ぎ汁の比ではありません。下水設備が必要性は人間そのものの存在から問われてしまうのです。

さて、ヌカを含んだ研ぎ汁がそのまま河川に排出されると富栄養化をもたらし、水質悪化やヘドロの問題を引き起こしますが、無洗米技術によりヌカが事前に回収され、二次利用できる様になりました。ヌカは非常に栄養価の高いものなので飼料や肥料に最適です。

家庭でも研ぎ汁を庭に撒いたり、鉢植えにあげたりして肥料代わりに使うことも多いようですね。しかし米の研ぎ汁が肥料になるというのはちょっと違うのです。

植物が吸収できるのは、無機質に限られます。有機肥料を与えていいのは発酵済みのものに限ります。発酵済みの肥料はバクテリアが多く発生し、そのバクテリアが無機質を作り出し、植物に効く肥料となります。

ところが米の研ぎ汁は、当然まだ発酵してません。与えるならバケツにとって置き、腐りきってからあげなければなりません。米の研ぎ汁をそのまま与えると、鉢植えの中で発酵しその発酵熱が根をいためることになります。庭に撒く場合は、発酵熱が分散しますので直接根をいためることはありませんが、これも発酵してから与えるに越したことありません。

農家で研ぎ汁を畑の周囲に使うことがありますが、これは肥料として使うのではなく、発酵熱や微生物の働きにより、雑草を増やさないための知恵だということです。

【関連記事】
[535]無洗米
[923]腐葉土
[939]有機と無機
[953]化学肥料と有機肥料