[1009]ブリキとトタン
ブリキとトタンの違いは誰でも知っていると思います。ブリキは鉄板にスズメッキをしたもの。トタンは鉄板に亜鉛メッキをしたものです。語源ですが、トタンはポルトガル語のTutanaga(亜鉛)からきており、ブリキは、オランダ語のBlic、ドイツ語のBlech(薄鉄板)から転化したものといわれています。
ブリキの場合、鉄板にスズメッキをすることで、スズが鉄板を覆って硬く守り、空気に触れさせないことで鉄が錆びる(酸化する)ことを防ぎます。スズは人体に無害なので、ブリキは缶詰や子供のおもちゃにも使われるわけです。
一方、トタンは亜鉛メッキ。亜鉛は鉄よりも錆びやすいので、鉄が錆びる前に亜鉛のほうが先に錆びて、結果として鉄を守ります。これは金属のイオン化傾向(錆びやすい)は「Zn(亜鉛) > Fe(鉄) > Sn(スズ)」という順位になっていることから裏づけされます。
トタンに使う亜鉛は健康サプリメントとして微量に摂取する分には必須ミネラルですが、基本的には人体にとって毒となります。ブリキのおもちゃや缶詰はあってもトタンのおもちゃや缶詰はありえません。
実際には、トタンは安価な亜鉛を使っているため屋根に使われることが多かったのですが、最近の日本ではメンテナンスのかかるトタンではなく、耐久性のあるガルバリウム鋼板が人気です。トタンは亜鉛層を守るために頻繁に塗装をするなどしてメンテナンスしなければなりません。人件費の高い日本ではメンテナンスに手間がかかるのではちっとも安くないのです。缶詰のほうは、いまだにブリキ缶が現役です。
次回は「ガルバリウム」について薀蓄を傾けます。