[43]子供時代の趣味2.写真・カメラ(2)

2019年3月21日

第43回
■子供時代の趣味2.写真・カメラ(2)
《自分で写す・ボックスカメラ》
小学校二年生くらいに成った頃、父が木製のボックスカメラを買ってくれました。これは「写真機」として初めて手にしたものでした。値段は50銭でした。縦10cmくらい、横6cmくらい、奥行き12cm位の箱で、前面にレンズとシャッターがついていて、全体は黒いレザーが張ってあり、後ろには磨りガラスが嵌めてあり、其の後ろに溝があって、そこにフィルムを入れるように成っていました。レンズは単玉で、つまり「虫めがね」見たいなものです。こんなカメラでも、自分で好きなものが写せるとなったら・・嬉しくて、嬉しくて仕方がなかったですね。
早速小伝馬町のカメラ屋に走りました。乾板を買うためです。(乾板とは専門家が使うものは、ガラスに感光剤を塗ったものですが、こんなオモチャみたいなカメラに使うものは、セルロイドに感光剤を塗って黒い紙のホルダーに入れたものです)此の乾板をカメラの後ろの溝に入れて、ホルダーに付いている蓋を引き抜くのです。するとカメラの露出部分に感光剤が当たる様になります。
このカメラのシャッターはBしかありません。Bとはバルブと言って、シャッターを押すと開きっぱなしになるものです。何分の一秒なんて云う代物ではないんです。ですから写す時は、被写体にカメラを向けたら、もしそれが人物だったら「動くなよ」と云って、シャッターを押し「1,2,3,4,5,」と勘定して シャッターを放します。そして乾板のホルダーを閉じます。これで撮影は終わりです。だが相手が動いて居るものは写すことは出来ません。まるで明治初期に初めてカメラが日本に入って来た時の状態と一緒ですね。
写し終わった乾板は写真屋に持って行くんです。すると店先に赤い薬の入ったバットと、青い薬の入ったバットがあり、店員が持ち込んだ乾板を赤い薬の入ったバットに入れて、ホルダーの紙を引き抜くと、乾板のフィルムに直ぐに写した絵が出て来ました。適当に絵が出たら、今度は青い薬のバットに入れます。つまり赤い液は現像薬で青い液は定着薬だった訳です。
終わると簡単に水洗いして乾かします。乾いたら前の「日光写真」と同じ様にガラス枠に、今現像したネガを入れ、後ろに印画紙を入れて、電気の明かりで1分位焼いて、現像・定着・水洗いして、乾かして出来上がりです。店先の明るい所で出来てしまうんですからね。感度が遅いものですから、簡単なんですね。しかし、出来上がった写真の質が良くないですね。色はセピアみたいに茶色っぽいし、カメラが安物ですからピントも甘いです。
《蛇腹式のカメラ》
小学校五年生に成った頃、此のボックスカメラでは物足りなくなりました。かといって父が自分の「パーレット」をくれる筈がありません。この頃は日本橋でなく小石川に引っ越ししていました。丁度家の前から巣鴨駅前通りに出たところにカメラ屋があったんです。名前は忘れましたが小さなお店で女の人が経営していたようです。
そこで「蛇腹式の日の丸カメラ」と云うのを見つけちゃったんです。値段は1円10銭でした。これが欲しくても値段が高くて手が届きません。そこで母にねだりました。だけど素直には買ってくれません。「ダメ」の一点張りです。そこで粘りました。半日も粘ってようやく買って貰ったのです。
操作はボックスカメラと変わりませんが、カメラの前蓋を開けて、蛇腹の本体を引き出すのです。高級蛇腹式のカメラと一緒ですが、レンズは固定焦点の単玉で、シャッターもBしかなく感光板も乾板式で、前のボックスカメラと全然同じです。ただカッコが良かっただけでしたね。
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ドイツ製ボックスカメラ アグファ シンクロボックスAgfa Synchro Box
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