[16]尋常小学校と通信簿(1)

2019年3月21日

第16回
■尋常小学校と通信簿(1)
此の幼稚園を1年で卒業し、この学校の小学校に入学しました。昭和10年3月まで、先程書きました日本橋小伝馬町の十思小学校です。(じゅっし)と読みます。
此の小学校は大正12年の関東大震災の後に建てられた復興小学校の一つで、建物の角が大きなRを描き、窓も半円のアーチを描いた典型的なデザインで、10年前に廃校となりましたが現在は中央区役所の日本橋出張所として現存しています。
今此処に昭和8年度の通告書(通信簿)があります。通信簿ではなく通告なんですね。
まず表紙の右端に縦書きで「第一学年男組」誰々と名前が書かれ、次に「保護者」として父親の名が書かれ、中央に大きな字で「昭和八年度 通告」と書かれ、その横に「第六号 東京市十思尋常小学校」となっています。
此処に書かれている「第六号」とは多分第六期生と云う意味だと思います。先程も一寸触れましたが、この学校は震災後の復興小学校で昭和2?3年に出来たものですから、昭和八年度は「第六号」だと思います。
此の通告は二つ折りで一面B6位の大きさです。まず開いて右面の端から、学校長の氏名、其の下に担任訓導の氏名、其の下に児童の氏名・・が書かれて居ます。其の次の行には「通告要旨」として小さな字で三行で次のように書かれています。
一、この通告は児童の学業成績、出欠、並に身体検査の結果を家庭に報告する用に供す。
一、この通告を受けたる時は、家庭に於いて一覧の上、捺印して直ちに返戻するものとす。
一、学業の成績は甲(10 9)乙(8 7 6)丙(5 4)丁(3 2 1 0)操行は善、良、可の評価を以て表す。
以上のように書かれており、当時の評価は甲、乙、丙、丁の十干が使われており、丙、丁は落第点であったのです。
次が成績表で此処に書かれた評価によって、これを親に見せた時に、褒められるか、頭から雷が落ちるかの分岐点になるのです。
教科目は次のようになっています。
修身、国語、算術、国史、地理、理科、図画、唱歌、体操、裁縫、手工、操行・・・となっており、其の下に担任訓導と保護者の捺印の欄がある。上のうち「国語」は読方、綴方、書方、に別れており、「算術」は筆、珠に別れている。
そしてそれぞれが「第一学期」「第二学期」「学年末」に別れています。
次の欄は「判定」「校長印」と「備考」となっています。
次の欄は「身体検査表」で、「検査月日」「発育」には「身長」「体重」「胸囲」「概評」があり、其の下に「栄養」「脊柱」「視力屈折・・左、右」「色神」「眼疾」「聴力」「耳疾」「歯牙」「疾病異常」「観察」「注意」欄と保護者印と担任訓導印の捺印があります。
次の頁は上の欄は「出欠席表」となっており、月次は四月から翌年三月まであり、終わりに合計欄があります。項目には「出席」「欠席」・・この中には病気、事故・・とあり、次には「忌引」「遅刻」「早退」「保護者印」とあります。
ちなみに此の昭和八年度の出席日数は247日でした。
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